
全国でクマによる被害が相次ぐ中、環境省は自治体がハンターを直接雇用するのを支援しようと交付金の調整を進めていることを明らかにしました。クマによる人的被害は深刻化の一途をたどっており、2025年度は10月15日時点で7人が死亡と過去最多を更新しています。
クマ被害の深刻化を受け、環境省は来年度予算の概算要求で、クマを含む「指定管理鳥獣」の対策に充てる自治体への交付金に37億円を計上する方針を固めました。この交付金は2025年度当初予算の2億円から大幅に増額されており、国としてクマ対策を重要課題と位置づけていることがうかがえます。
浅尾慶一郎前環境相は取材に対し、「銃猟ができる資格を持っている人を自治体が直接雇用できるような形で、雇用する原資を出す交付金を、いま財務省と交渉している」と明言しました。時期のめどについては「できるだけ早くですので、来年度の予算、あるいはその前の予算でできればと考えています」と述べ、迅速な対応を目指す姿勢を示しました。
この交付金は、市町村が緊急銃猟に対応するハンターを会計年度任用職員として採用する人件費に充てられるほか、市町村主催の訓練や研修会開催にも活用できるようになります。また、都道府県でクマやシカなどの指定管理鳥獣の出没対策に当たる専門職員の雇用も可能となります。環境省の担当者は「緊急銃猟を実施する市町村への応援要員としても想定している」と説明しています。
この施策の背景には、深刻なハンター不足があります。全国の狩猟免許所持者は1975年度には約52万人いましたが、2020年度には22万人ほどに減少しており、さらに60歳以上が6割近くを占めるなど高齢化も深刻な問題となっています。
「ガバメントハンター」制度への期待高まる
こうした中、自治体が専門人材を直接雇用する「ガバメントハンター」制度への期待が高まっています。この制度は、野生鳥獣の調査・捕獲・住民対応・啓発活動などを専門に担う職員を地方自治体が直接雇用し、制度的に対応体制を構築する取り組みです。
先行事例としては、長野県小諸市が2011年度に野生動物対策を専門に担う「鳥獣専門員(ガバメントハンター)」を任命し、2013年4月からは地方上級公務員として正規雇用しています。また、北海道では占冠村をはじめとする4市町村でガバメントハンターが設置され、クマなどの大型獣対策に取り組んでいます。
今回の環境省の交付金調整は、こうした先行事例を全国に広げる重要な一歩となります。ハンター不足と高齢化が進む中、自治体が専門人材を確保できる体制整備は、住民の安全確保に直結する喫緊の課題です。今後は財務省との調整を経て、具体的な支援内容が決定される見通しです。









-280x210.png)


-300x169.jpg)