
米メディア大手ワーナー・ブラザース・ディスカバリー(WBD)の買収をめぐる争奪戦が、パラマウント・スカイダンスによる全社買収で決着に向かっています。当初は動画配信大手ネットフリックスがスタジオ部門やストリーミングサービス(HBO Max)を約827億ドル(約12.4兆円)で取得する計画でした。
ネットのストリーミング企業が老舗映画スタジオを飲み込む構図として注目を集めたものの、その後パラマウントがケーブルテレビや報道部門を含む全事業について、1株当たり31ドル、総額約1100億ドル(約17兆円)規模の買収案を示し、交渉の構図が一変しました。
WBD取締役会は当初ネットフリックス案を支持していましたが、パラマウントの1株31ドルとする修正案を受けて、ネットフリックス案より優位と判断し、方針を転換。ネットフリックスは2月26日、対抗入札を断念して交渉から撤退すると発表しました。これによりパラマウントによる買収が確定的な情勢となりました。
WBDの業績悪化も、今回の売却の背景にあります。同社は映画、報道、ケーブルテレビ、ストリーミングを含む複合メディア企業ですが、テレビ離れやコンテンツ制作費の高騰で収益環境が悪化。2025年第4四半期も最終赤字が続いており、多額の負債を抱えた状態となっています。スタジオ事業では興行収入の不振が続き、配信事業は加入者が増えたものの利益の伸びは限定的です。
一方のパラマウント・スカイダンスは、映画会社パラマウント・ピクチャーズに加え、米三大ネットワークの一つCBSを傘下に持つ巨大メディアグループです。CEOのデービッド・エリソン氏は「両社の遺産を尊重しながら、視聴者や株主への価値を高める」とコメントしており、取引は独占禁止法審査や株主承認を経て、2026年12月末までの完了を想定しています。
トランプ政権の政治介入と規制審査、今後の課題
今回の買収劇では、報道局CNNの扱いとトランプ政権の政治的介入が焦点です。トランプ大統領はかねてCNNを批判しており、ネットフリックス案がCNNを含まない一部買収だったのに対し、パラマウント案はCNNを含む全事業が対象。トランプ政権と関係が深いとされるエリソン家による買収が「CNNを通じた報道への影響力強化につながるのではないか」との懸念も出ています。
連邦通信委員会(FCC)のブレンダン・カー委員長はパラマウント案について「迅速に承認される」との見通しを示しており、司法省の独占禁止法審査も含めて承認される公算が大きい状況です。なお規制当局の承認が得られない場合、パラマウントはWBDに70億ドルの違約金を支払うことになっています。
市場はネットフリックスの撤退を好感し、同社株は発表後に上昇。一方でパラマウント株は多額の買収費用への懸念から大幅に下落しており、今後の財務負担の重さを反映した形です。












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