5月病で会社を辞めたくなるその前に…。新卒1年目の早期退職を回避する「入社対策」

5月病で会社を辞めたくなる その前に 新卒1年目の 早期退職を回避する 「入社対策」

3/1は新卒大学生の就活解禁日。私は大学教員と同時に人事・経営の実務専門家の視点から、長年全国の大学や就職イベントで、大学生・院生の就活指導をしています。そんな中、毎年この時期に行っているのは、就職対策ではなく、「入社対策」セミナーです。

入社してすぐの時期は、慣れない環境でのミスや人間関係の悩みは、誰にでも起こるものです。しかし、感情に任せて早期離職を選ぶことは、将来のキャリアに大きな影を落としかねません。

組織の仕組みや評価の本質を理解すれば、目の前の壁は必ず乗り越えられます。本記事では、今の苦しみを成長に変え、自立した会社員として歩むための心得をお伝えします。

<目次>

卒業生から来るメールの裏に隠れたSOS

卒業生からのメールを受け取る大学教授

20年近く大学教員として、キャリアやコミュニケーションを指導してきました。授業だけでなく、就職活動の学生への個人相談など含めて、頻繁に会う学生もいます。そんな学生の中から、「卒業後」も連絡をもらうことがあります。

社会人生活が始まった年の5月の連休明けや6月のボーナス時期など、少し卒業からタイムラグがあるのが特徴ですが、時候の挨拶のような特段の中身のないメールが来ることがあります。そんな時は返信時に、何も書いていなくとも「会社を辞めたくなったの?」聞いてみたりしますが、これが9割方当たります。

だいたいこの時期に会社のアラが目立ったり、仕事を覚えてミスして落ち込んだりする時期ではないかと思うので、わざわざ卒業した大学の教員に連絡するのは、多分そっちの理由だろうと容易に想像が付きます。まして私は人事・経営の専門家、コンサルタントでもあるため、在学中の就職指導でも、採用企業目線で学生指導をします。

それを覚えている学生が連絡をくれたとすれば、やはり教員としても支援してあげたくなります。メールやり取りだけで済むこともあれば、何人かはオンラインなどで直接会ったりすることもあります。

企業の新入社員研修で必ず触れること

研修ルーム

企業における新入社員研修にも長年関わってきました。一般的な社会人の心得などはカバーしますが、それ以上に注力しているのは、今時の若者のリスク管理です。

SNSなどでのインターネット炎上は、会社員になれば個人の問題では済まない大事件になり得ることや、どんなきっかけでそうしたトラブルが起こるのか、学生の時との違いには特に注力します。一度起こったらもう収拾がつかなくなる事態は、その責任が会社全体を巻き込む企業リスクとなることも大事なポイントでしょう。

もうひとつ大切なことに、「辞めたくなるモチベーション変化」があります。これまで20年以上過ごした「子供」の立場から、社会人という「大人」に大きく環境は変わります。それに加えて新たな職場という不慣れな環境もあり、適応に苦労する若者は少なくありません。

また企業としてもせっかく採用した貴重な新卒社員に、入社後間もなく辞められてしまうのは困るし、損です。仕事をしていれば定期的に襲ってくる「辞めたくなるモチベーション変化」を知っておくだけでも意味があったと、実際指導した社員から後日聞いた時はとてもうれしく思いました。

そこで私が新入社員研修を担当する企業以外でも、新卒学生に対して、実践的なキャリア教育ができればと考えました。このようにして社会人・会社員になる心がまえと会社組織のあり方を教えるという「4月から社会人になる新卒学生への講座」が生まれたのでした。

就職対策ではなく「入社対策」とは?

新人研修を行う講師

「入社対策」というよりは、知っておけば後で後悔しづらくなる会社員としての知見を、長年さまざまな企業や環境を見てきた人間として、そして今現在の人事背制度、企業組織を見続けている人間として、実践的キャリア教育の一環として、毎年講座を開催しています。

定期的に辞めたくなる気持ちについては、それが本当に辞める理由になるのか、もし新卒で入社間もなく辞めた場合、その後どうなるのかなどを説明します。ヘッドハンターをやっていた頃、一流大学卒・一流企業勤務の候補の方でも、新卒時に1年未満で辞めてしまった方は、極端に選考通過率が悪くなっていました。

職務やポジションにもよりますが、私は辞めたことだけでなく、入社後早々に辞めてしまう判断をしたその思考が、問題視されていると思っています。たしかに一流大学を出ていれば、今時20代なら転職先はいくらでもあるでしょう。では40代になったら?50代どころか60代でも仕事を探す人はいくらでもいますが、その時に履歴書の職歴「1行目と2行目」はどう映るでしょうか。

会社を辞めるまで行かずとも、上司との人間関係は会社員人生においてとても重要です。今時の若者は「がんばったこと」をアピールしますが、会社員はがんばったかどうかより、成果が上がったことの方が評価されます。数値化されない精神論から脱却し、会社が社員に求めるものを理解する。これこそ会社員というキャリアを進む上ではきわめて重要になります。

今時の上司は自らも業務責任を負うプレイイングマーネージャーであるのが普通です。自らも成果を出さなければならない立場であれば、イエスマンで逆らわないが何も成果を上げられない部下が、上司へのおべっかだけで出世できることはまずないでしょう。

逆に仕事で成果を出せれば会社は見逃しませんし、何より今時の上司からすれば、仕事で成果をだしてくれる以上の喜びはありません。口先のおべっか以上の、最高の評価材料は成果です。

会社に依存しない「危機管理」が大事

考える新入社員

新入社員なのに転職を考える若者は少なくありません。大学生として就活している時から、将来転職しやすそうかなどと聞いてくる学生もいます。

これについても、今時、終身雇用を壊した会社に一生いるかどうかだけでなく、いられるかどうかもわからない現実があります。転職を勧めるのではなく、ひとつの会社が一生続くかどうかも不透明な時代、転職するしないというより、「いつ会社がなくなっても大丈夫」というような危機管理が大切であることを説明します。

「転職の仕方」とはレジュメの書き方や面接対策ではありません。職場を変える時に求められるものが何か、一流大学卒の学歴は新卒以外では“Nice to have“であって、実績こそすべてです。成果を上げる仕事ができるのか、成果と一口にいっても、新入社員のようなエントリークラスで出せる成果、初級管理者から中間管理職など段階別の成果はそれぞれ異なります。

新入社員が、会社を動かすような大仕事ができる可能性はまずありません。そんな大それた成果ではなく、地味だったり雑用だったり、しかしそれらがあることでプロジェクト全体が動くような、正に会社員としての役割であり成果を、しっかりと見極めることが、新たな人生をスタートするうえで、とても重要であることを知っておいてほしいと思っています。

恐らくこの内容が身に染みて理解できるのは何年か先ではないかと思います。しかし後になってその意味することがわかったと連絡をもらった時のうれしさは、本当にかけがえのないものだと実感しています。

増沢隆太東北大学特任教授

投稿者プロフィール

人事コンサルタント。産業カウンセラー。Yahooニュース公式コメンテーター。
危機管理コミュニケーション専門家として、企業不祥事やトラブルだけでなく、芸能人や政治家など著名人の問題でもさまざまなメディアでコメント発信をしている。「謝罪のプロ」と呼ばれ、NHKドキュメント20min. にも出演。

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