
2025年度の輸出船契約実績が4年連続で減少し、日本の造船業が曲がり角に立たされています。日本船舶輸出組合が4月13日に発表した2025年度(2025年4月〜2026年3月)の輸出船契約量は904万総トンで、前年度比15〜16%減と5年ぶりに1000万総トンを割り込みました。造船各社の手持ち工事量は3月末時点で約2935万総トンと約3.5年分に達し、造船所の船台は少なくとも2029年ごろまで既存受注で埋まっているにもかかわらず、新たな需要を取り込み切れていない状況です。背景にあるのは深刻な人手不足で、国内の一部造船所ではドックをフル稼働できず、広島県福山市の常石造船・常石工場ではピーク時から稼働率を4割引き下げ、技術者を確保しやすい海外拠点の拡充を進めています。
一方で世界の造船需要は拡大基調が続いています。船舶の寿命が20年前後とされるなか、2010年前後に建造された船の更新が本格化しているうえ、国際海事機関(IMO)が2050年までに国際海運の温室効果ガス排出量実質ゼロを掲げたことを受け、アンモニア燃料船や水素燃料船など次世代燃料対応船への買い替え需要が今後立ち上がる見通しです。こうした世界需要の拡大を前提に、日本政府は2035年に国内の新造船建造量を2024年比でほぼ倍増となる1800万総トンへ引き上げる目標を掲げています。
しかし現状の国際シェアを見ると、日本の立場は厳しさを増しています。英クラークソンズ・リサーチのデータをもとにした分析によれば、2024年の世界新造船受注量における国別シェアは中国が7割超、韓国が約17%で、中韓2カ国で9割近くを占め、日本は約5〜13%にとどまるとされています。
国内大手の今治造船の檜垣幸人社長は、日本のシェア低下に強い危機感を示し、「海外の新規需要どころか、日本の荷主の船の更新需要にも対応しきれなくなっている」と訴えています。政府は造船を経済安全保障上の戦略分野のひとつと位置づけ、米国との間で建造能力拡大に向けた覚書を締結するなど、日米連携による造船業の立て直しも模索しています。
AIロボットと人材獲得で反転攻勢なるか
人手不足という構造的課題を前に、造船各社は人材確保と自動化の両面から打開策を探っています。業界2位のジャパンマリンユナイテッド(JMU)は2026年度の新卒採用者を141人とし、2025年度の約1.4倍に増やしましたが、過去の好況期に入社した世代の退職が進み、なお十分ではないとしています。
最大手の今治造船も2025〜26年度にかけて100人前後の採用を続け、常石造船は2025年に大卒初任給を28万円へ引き上げるなど処遇改善で人材獲得を強化しています。長崎県西海市の大島造船所が退職者を呼び戻す「カムバック採用」を導入するなど、業界全体で多様な採用策を打ち出しているのが現状です。
同時に、自動化を通じた生産性向上にも期待が集まっています。国土交通省は「AIの活用による次世代造船所の実現に資する技術開発事業」として、AI造船ロボットなどに関する14件の研究開発プロジェクトを採択し、日米の大学やロボット企業、造船事業者らが連携して高度な溶接や曲面加工などを自動化する取り組みを後押ししています。JMUは独自の溶接ロボットを開発し、今治造船は複数ロボットをAIで連携させることで人手による作業を減らす試みを進めています。これまでオーダーメイド色が強く自動化が進みにくかった造船現場でも、単純な溶接工程を皮切りにロボット活用が広がりつつあります。
一方で、中東情勢の混乱や原油高など、市況の先行きは読みづらい状況が続きます。ホルムズ海峡の事実上の封鎖が長引けば、迂回航路の利用によって必要船腹量が増える可能性がある一方、原油高が世界経済を冷やし海上輸送量を押し下げるリスクも指摘されます。
塗料の原料となるナフサ由来シンナーの供給不安が長期化すれば、造船や海運の事業継続自体が揺らぎかねないとの懸念も経営者から出ています。日本の造船業が政府の倍増目標と経済安保上の役割を両立させるには、人材不足というボトルネックの解消と、AIロボットを活用した生産性向上を同時に進めつつ、市況の変動リスクに耐えうる投資戦略を描けるかどうかが問われていると言えます。









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