
東京都心などでマンション開発用地の逼迫が続くなか、「定期借地権付き(定借)マンション」の供給が急増しています。地価の上昇で土地を手放さない地主が増え、用地取得が難しくなる中で、デベロッパー各社は土地を一定期間だけ借りて建物を分譲する定借スキームを活用し、好立地かつ価格を抑えた物件の開発を進めています。
不動産経済研究所によると、首都圏の定期借地権付き新築マンションの供給戸数は2025年に1502戸と過去最多となり、前年(2024年)の約2.7倍に拡大しました。同研究所は、2008年の過去最多(1281戸)を上回ったとしています。
定借マンションは、50年や70年といった期限付きで地主から土地を借り、その上に建てられたマンションを分譲する仕組みです。購入者は建物部分のみを区分所有し、期間満了時には建物を解体して更地に戻したうえで土地を返還するのが一般的です。 その代わり、土地取得コストを抑えられるため、同じエリアの所有権マンションと比べて販売価格が15〜20%程度割安になるケースが多いと指摘されています。
都心部では、千代田区三番町で三井不動産レジデンシャルが手がける「パークコート ザ・三番町ハウス」が2025年に竣工しました。借地期間は約70年で、東京メトロ半蔵門線「半蔵門」駅から徒歩10分圏内という都心の一等地に位置します。 文京区小石川では日鉄興和不動産などが総戸数522戸の大規模定借マンション「リビオシティ文京小石川」を展開しており、借地期間は約70年、2097年7月31日までに更地にして返還する契約となっています。
価格高騰が続く都心マンション市場において、こうした定借マンションは「立地は譲れないが、購入予算には限りがある」30代前後の若い夫婦や子育て世帯などの実需層から注目を集めています。 一方で、購入後は地代や解体積立金といった、一般的な所有権マンションにはない負担が発生するのも特徴です。また、契約期間満了後は原則として住み続けることができないため、ライフプランや資産形成をどう考えるかが重要な検討ポイントとなります。
中古市場での評価に差も 残存年数と立地が価格動向を左右
定借マンションを将来の住み替え前提で購入する世帯も増えるなか、中古市場での価格形成にも関心が高まっています。足元では、都心部の中古マンション価格が新築時を上回るケースが相次いでいますが、定借物件の価格上昇率は、周辺の所有権マンションと比べると低く抑えられる傾向が指摘されています。
背景の一つとされるのが借地権の残存期間です。借地の残り期間が35年を切ると、一般的な35年ローンを組みにくくなるため、買い手が付きにくくなり、売り出し価格が下落基調に転じやすいとされています。実際に、2008年に東京都品川区大崎エリアに建てられた定借マンションでは、残存35年を過ぎた2024年以降に売り出し価格が下落に転じたほか、千葉県船橋市や埼玉県川口市の定借物件でも同様の傾向が確認されています。
一方で、都心の一等地に建つ定借マンションの中には、借地の残存期間が35年を切った後も価格が上昇している例も報告されています。銀座や神楽坂など、地価上昇が続くエリアでは、土地そのものの希少性が中古価格を下支えしている面があるとみられます。ただし、こうした値動きはあくまで足元の好況なマンション市況に支えられたものとされ、残存年数が短くなった定借物件が長期にわたり値上がりを続ける場合には「バブル」の懸念も指摘されています。
供給が増えるにつれて、定借マンションは「割安な都心物件」としてだけでなく、中古売却時の価格動向やローン条件、残存年数といった条件を総合的に理解したうえで選択することが求められます。購入予定者にとっては、所有権マンションとの違いを十分に把握し、出口戦略も含めた長期的な視点で検討することが重要になっているといえます。


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