AST SpaceMobile株を一部売却した楽天 三木谷氏の思惑と衛星通信事業の行方

AST SpaceMobile株を一部売却した楽天 三木谷氏の思惑と衛星通信事業の行方

楽天グループ株式会社と楽天モバイル株式会社、そして両社の創業者である三木谷浩史氏が、出資先の米衛星通信ベンチャー、AST SpaceMobile(ティッカーシンボル:ASTS)の株式を一部売却したことが分かりました。米証券取引委員会(SEC)に提出された書類などによりますと、三木谷氏は2026年4月14日と15日の2日間で、AST SpaceMobileのクラスA普通株式304万株を売却し、約2億7000万ドル(約700億円)を手元資金として確保したとされています。

売却価格は、14日に169万株を加重平均価格91.42ドルで売却し、1株87.50〜103.96ドルの範囲で複数回に分けて取引されたほか、15日には135万株を加重平均価格86.22ドル、1株84.04〜88.71ドルの範囲で売却しています。AST SpaceMobileの株価は過去1年間でおよそ3倍となる289%の急騰を見せており、今回の売却は株価上昇局面での一部利益確定とみられます。

一方で、投資情報サイトInvesting.comの分析では、同社株は依然として価格変動が大きく、足元で黒字化が見込める状況にはないとの見方も示されています。SECへの提出文書によると、楽天モバイルは今回の取引後もAST SpaceMobileの株式2798万155株を直接保有しており、発行済みクラスA株の約5%超に相当する規模を維持しています。

また、楽天モバイルは2026年4月14日付でBofA証券と取引計画を締結し、今後最大1550万株を公開市場で売却する枠組みも設けており、保有株の約半分を段階的に手放す可能性が示されています。

楽天グループの創業者で会長兼CEOの三木谷氏は、こうしたAST SpaceMobile株式について、楽天モバイルが保有する分の「実質的所有者」とみなされる可能性がある一方で、自身は間接的な金銭的利益の範囲を除き、実質的所有権を否認していると説明しています。

日本経済新聞は、今回の売却規模がASTの発行済みクラスA株の約5.3%にあたり、楽天による総保有数の約半分に相当すると報じており、楽天グループの資金繰りや成長投資の原資確保という観点からも注目を集めています。

BlueBird 7打ち上げと評価の分かれる投資家の見方

AST SpaceMobileをめぐっては、事業面でも動きが相次いでいます。米宇宙企業ブルー・オリジンは、大型ロケット「ニューグレン」の次期ミッション「NG-3」において、ASTの次世代通信衛星「BlueBird 7」を打ち上げる計画を発表しており、日本の宇宙ニュースサイト「sorae」など国内メディアも報じています。

BlueBird 7は、一般のスマートフォンと直接つながる「ダイレクト・トゥ・デバイス(D2D)」向けに、約223平方メートルの大型アンテナを搭載した衛星で、打ち上げが成功すれば、低軌道衛星を活用したモバイル通信サービスの実証において重要なマイルストーンとなる見通しです。楽天モバイルは、AST SpaceMobileに出資するとともに、日本国内での衛星モバイルサービスの展開に向けて協業を進めてきました。

2025年4月には、ASTの試験衛星「BlueWalker 3」を用いて、日本国内で初めて低軌道衛星から一般スマートフォンへの直接通信に成功したと発表しており、山間部や離島など基地局整備が難しい地域でのサービス拡充に期待が高まっています。こうしたなかでの株式売却については、「提携解消ではなく、資金効率やリスク管理を意識したポートフォリオ調整」とみる向きも、国内の解説記事や関係者のブログなどで示されています。

一方、証券アナリストの評価は分かれています。Investing.com日本語版によると、ドイツ銀行はAST SpaceMobile株の目標株価を、AmazonによるGlobalstar買収などで競争環境が厳しくなるとの懸念から、139ドルから117ドルへ引き下げつつも、投資判断は「買い」を維持しています。

また、別のレポートでは、ドイツ銀行が衛星通信セクター全体の評価手法を見直すなかで、ASTの目標株価を従来の22ドルから63ドルに大幅引き上げた経緯も紹介されており、長期的な成長余地を評価する声も根強いことがうかがえます。楽天グループとしては、依然として多額の設備投資が続く携帯事業の財務負担を軽減しつつ、ASTとの協業による「空と地上を一体化した通信ネットワーク」の実現をどこまで加速できるかが焦点となります。

今回のAST SpaceMobile株売却は、楽天の財務戦略と衛星通信事業の成長戦略が交差する局面を象徴する動きといえ、BlueBird 7の打ち上げ結果や今後の業績動向は、楽天とAST双方の評価を左右する重要な材料となりそうです。

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