
名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院と金沢大学の研究グループが、内視鏡(胃カメラ)やバリウムを使わずに胃の内部を立体的に観察できる新たな「バーチャル内視鏡検査法」を開発しました。最新の2管球CT装置で撮影した画像に独自の画像処理を組み合わせることで、あたかも胃の中を直接のぞき込んでいるかのような没入感のある3D画像を生成し、胃壁の状態を詳細に確認できるのが特徴です。
従来の胃がん検診では、経口または経鼻の内視鏡検査に伴う「苦しさ」や、バリウム検査の飲みにくさが受診のハードルとなっており、検診離れの一因と指摘されてきました。新手法では、検査時にバリウムを飲む必要がなく、内視鏡を挿入しないため、身体的・心理的負担を大きく軽減できるとされています。
さらに、この検査法は被ばく線量の低減も重視しており、日本の診断参考レベル(DRL)14.0mGyを下回る条件で、診断に耐えうる高精細画像を得られることが示されています。CT撮影によって得られたデータは、写実的レンダリング技術により実物に近い質感の3D画像へと変換され、胃のひだの裏側まで死角なく観察できるといいます。また、一度のCT撮影で胃だけでなく、肝臓や膵臓など上腹部の臓器も同時に確認できるため、複数のがんや疾患をまとめてチェックできる点も大きな利点です。
研究グループは、こうした技術を活用することで「飲む」検査から「撮る」検査へと発想を転換し、受診者の負担が少ない次世代型の胃がん検診インフラの構築を目指しています。今後はAIによる画像診断技術との連携を進め、見落としを最小限に抑えた迅速かつ正確な判定を行う体制を整備する方針です。
専門医不足解消や受診率向上にも期待 早期実用化へ連携強化
バーチャル内視鏡検査法の普及により、患者の苦痛を和らげるだけでなく、内視鏡専門医の不足という医療現場の課題解決にもつながる可能性があります。従来の内視鏡検査は、熟練した医師が一件ずつ実施する必要があり、地域によっては検査枠が限られて予約が取りづらい状況も生じていましたが、CT撮影と高度な画像処理に基づく検査であれば、撮影と診断のプロセスを分離し、遠隔読影なども組み合わせやすくなります。
名古屋市立大学はプレスリリースで、本技術により対策型胃がん検診の選択肢が広がり、検診を敬遠していた層も含めた受診率の向上が期待できるとしています。愛知県唯一のX線CT専門技師と大学病院が連携して開発を進めており、愛知県内に2台しかない高性能CT「SOMATOM Force」の最新バージョンを活用することで、胃の動きによるブレを抑えた超高速スキャンを実現しています。
金沢大学も、AI時代を見据えた新しい画像技術として位置づけ、研究成果を公表しています。現在、専門チームが早期実用化に向けた検証や運用設計を進めており、将来的には自治体の胃がん検診や人間ドックなどへの導入も視野に入れられています。研究グループは、より多くの医療機関が利用できる仕組みを整えつつ、安全性と精度に関するデータを蓄積し、標準的な検査手法として定着させたい考えです。









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