
全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)は、国際線の燃油特別付加運賃(燃油サーチャージ)を通常より1カ月前倒しし、2026年5月発券分から大幅に引き上げる方針です。 引き上げの背景には、ホルムズ海峡の実質的な封鎖など中東情勢の悪化を受けた原油高騰と、シンガポールケロシン価格の急激な上昇があります。 両社は燃油サーチャージの算定ルールも見直し、より直近の燃料市況を運賃に反映しやすくすることで、コスト増を運賃に転嫁する動きを強めています。
燃油サーチャージは、航空会社が燃料費の変動分を航空運賃に上乗せして徴収する制度で、一定の上限額の範囲内で路線別に設定されています。 ANAとJALはこの上限額についても5月発券分から引き上げ、日本発欧米路線では両社とも片道5万9000円を新たな上限とします。 現行上限はANAが5万5000円、JALが5万円だったため、上限ベースでそれぞれ4000〜9000円程度の増加となります。 実際に5〜6月発券分に適用されるサーチャージは、政府の激変緩和措置による補助を踏まえ、欧米路線で片道5万6000円とし、上限をわずかに下回る水準に設定されます。
両社がサーチャージの指標とするシンガポールケロシンの価格は、ホルムズ海峡の実質封鎖を受けて1バレルあたり3万円超まで急騰しています。 従来、ANAとJALは特定の2カ月間の平均価格を基準に、3~4カ月後の発券分に適用するサイクルを採っていましたが、今回の見直しで市況反映のタイミングを1カ月前倒しし、より迅速に改定できるようにしました。 これにより、米国・イスラエルによるイラン攻撃の影響が出始めた2026年2~3月の価格水準が、5~6月発券分のサーチャージに早期に反映される仕組みとなります。
5~6月発券分の具体的な水準は、シンガポールケロシンの平均価格を「2万2000円台」とみなして算出され、日本発欧米路線ではANA、JALとも片道5万6000円が適用されます。 韓国線でも負担増が避けられず、5月発券分ではANAが片道6700円、JALが6500円と、いずれも数千円規模の引き上げが生じます。 こうした値上げにより、路線によってはサーチャージが2倍超となるケースもあり、特に長距離路線での影響が大きくなります。 片道5万6000円という水準は、往復では11万円超の追加負担となる計算であり、航空券の総支払額を押し上げる要因として、旅行需要への影響が懸念されています。
一方で、急激な負担増を前に、4月中の発券で現行水準のサーチャージ適用を受けようとする「駆け込み購入」の動きも出る可能性があります。 現行の4月発券分では、日本発欧米路線のサーチャージはANAが3万1900円、JALが2万9000円程度とされており、5月以降と比べて大きな差が生じます。 旅行会社や航空会社のサイトでは、発券日によってサーチャージ額が決まる仕組みをあらためて説明し、早期予約を促す情報発信もみられます。 原油高と円安が続くなか、今後も燃油サーチャージの高止まりが続くとの見方もあり、海外旅行を計画する消費者にとっては費用見通しの不透明感が増している状況です。
旅行需要と家計への影響、今後の焦点
今回の前倒し値上げは、ゴールデンウィークや夏休みシーズンを前にした海外旅行需要にも直接影響を与える見通しです。 欧州や北米など長距離路線ではサーチャージだけで往復10万円を超える水準が報じられており、家計への負担感から渡航先や日程の見直しを検討する動きが広がる可能性があります。 一部の旅行会社は、アジア近距離路線や燃油サーチャージが比較的低い方面への需要シフトを見込んでおり、ツアー商品の組み替えや早期割引の強化などで対応を急いでいます。
航空各社としては、燃料費の高騰分をサーチャージで回収しつつも、需要の落ち込みを避けるために運賃や路線計画の調整を迫られます。 すでにANAとJALは、サーチャージ算定の前提となるケロシン価格の上限帯を新たに設けることで、今後も市況に応じた柔軟な改定を可能にする姿勢を示しています。
一方で、頻繁な改定が利用者の価格予測を難しくし、「いつ航空券を買うべきか」がより重要な判断材料となる側面もあります。 旅行業界では、最新のサーチャージ水準や発券時期のポイントをわかりやすく伝える情報提供が求められており、消費者側も発券タイミングの違いが総費用に大きく影響することを意識する必要があります。












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