
短時間・単発で働く「スキマバイト」の仲介アプリ「タイミー」を通じて仕事に応募したものの、勤務直前に一方的にキャンセルされたのは違法だとして、1都4県の利用者9人が運営会社タイミー(東京都港区)を相手取り、未払い賃金や慰謝料など計約312万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こしました。 提訴は4月21日付で行われ、原告側は「マッチングが成立した時点で労働契約も成立しており、その後のキャンセルは違法な解雇に当たる」と主張しています。
訴状などによると、9人は2021年10月から2026年3月にかけ、飲食店などの求人に計135件応募し、タイミーのアプリ上でマッチングが成立しましたが、就業予定日の直前になって雇用主からキャンセル通知を受け、賃金や交通費など約102万円分を受け取れなかったとされています。 原告側は、タイミーが求人企業からの委託を受けて賃金を立て替え払いする仕組みを採用している点を踏まえ、「未払い賃金についてタイミーにも支払い義務がある」と指摘し、さらに1人当たり10万~50万円(計210万円)の慰謝料も求めています。
東京地裁での提訴後に東京都内で開かれた記者会見では、原告の60代男性が「キャンセルされるたびに愕然とする。泣き寝入りしているワーカーは多く、少しでも気持ちを分かってほしい」と訴えました。 原告代理人の弁護士は、スキマバイトの直前キャンセルをめぐり、仲介アプリ事業者としてのプラットフォーマーに直接責任を問う集団訴訟は初めてだとの見解を示しています。
一方で、短時間・単発の仕事をめぐっては、これまで主に飲食店など雇用主側を相手取り、未払い賃金の支払いを命じる判決が相次いでおり、契約成立時期やキャンセルの扱いをめぐる司法判断が積み重ねられてきました。 こうした流れの中で、利用者側の矛先が仲介プラットフォームそのものに向かった今回の訴訟は、スポットワーク市場全体のルール形成に影響を与える可能性があります。
タイミーは報道各社の取材に対し、「訴状が届いておらず、事実関係の確認がとれていないため回答を差し控える」とコメントしており、現時点で訴えの内容への具体的な反論や見解は示していません。
プラットフォーマーの責任と制度見直しの行方
スキマバイトをめぐっては、厚生労働省がスポットワークの労務管理に関する注意喚起を行うなど、法令遵守と労働者保護のあり方が課題となってきました。 こうした動向を受け、タイミーはサービス運営方針の見直しを進めており、労働契約が成立するタイミングについても従来の考え方を改める方針を打ち出しています。
同社はこれまで、業務当日に働き手が現場でQRコードを読み取ってチェックインした時点で労働契約が成立するとする運用をとっていましたが、スポットワーク協会の考え方などを踏まえ、応募完了時点で解約権留保付きの労働契約が成立するという方式へ変更する方針を公表しています。 また、2025年9月1日からは、企業都合による就業直前(開始24時間前以内)のキャンセルを原則不可とし、該当する場合には平均賃金の60%以上の休業手当を支払う新制度を導入する計画も示されています。
一方、今回の訴訟の対象となっているのは、こうした新方針導入前の案件を含む過去のキャンセル事案であり、原告側は「マッチング成立時点で契約が成立していた」との前提から、直前キャンセルは違法な解雇に当たると主張しています。 裁判では、アプリ上の「マッチング」が法的にどの時点での契約成立を意味するのか、また、仲介事業者としてのタイミーにどこまで賃金支払い義務やキャンセル防止義務が認められるのかが主要な争点となる見通しです。
スポットワークをめぐる裁判では、すでに飲食店運営会社に対し、直前キャンセルに伴う賃金や交通費の支払いを命じる判決も出ていますが、今回のようにプラットフォーマーの責任が問われるケースは初とされます。 判決の行方によっては、他のマッチングサービスやギグワーク関連プラットフォームにも同様の責任が及ぶ可能性があり、企業の労務管理やキャンセル規定の見直しが一段と進むことも予想されます。
スキマバイトは、子育てや学業、介護と両立しながら柔軟に働ける手段として利用が広がる一方、ドタキャンや報酬トラブルが社会問題化してきました。 今回の集団提訴は、急拡大するプラットフォーム型労働の「守りのルール」をどこまで整備できるかを問い直す試金石となりそうです。










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