
日立製作所が白物家電事業を家電量販大手ノジマに譲渡し、長年進めてきた事業ポートフォリオの転換が大きな節目を迎えます。
日立と日立グローバルライフソリューションズ(日立GLS)は2026年4月21日、国内外の家電事業を統合した新会社を設立し、その株式の80.1%をノジマに約1100億円で譲渡すると発表しました。 譲渡完了は2027年3月期中を目指し、完了後は新会社がノジマの連結子会社となる一方、日立は19.9%を出資してブランドなどに関与を続けます。 新会社は冷蔵庫や洗濯機、掃除機、調理家電といった白物家電に加え、トルコの家電大手アルチェリクとの海外合弁事業の持分も引き継ぐ見通しです。
日立GLSは国内白物家電でパナソニックホールディングスに次ぐ2位の地位を持ち、栃木県栃木市や茨城県日立市、静岡市などに生産拠点を構え、2025年3月時点で約5100人が働いています。 白物家電は日立グループにとって長年の柱でしたが、近年は中国メーカーなどとの競争激化で価格下落が進み、売り切り型ビジネスゆえに収益性改善が課題となっていました。 2025年4~12月期の白物家電事業の売上高は前年同期比3%減の2634億円と伸び悩み、調整後EBITAは183億円と増益だったものの、EBITA率は6.9%にとどまり、グループ全体の12.1%を下回りました。
日立は2009年3月期に7873億円の最終赤字を計上したことを契機に、「社会イノベーション」を掲げて事業構造を大きく転換し、ITサービスや送配電、鉄道などBtoB中心の安定収益事業へのシフトを進めてきました。 事業選別の軸となったのが独自のデジタルトランスフォーメーション基盤「ルマーダ」であり、同分野の強化に向けてスイスABBの送配電事業や米グローバルロジックといった大型M&Aを相次いで実施しています。 一方、日立金属(現プロテリアル)、日立電線(現日立金属に統合)、日立化成(現レゾナック)など「御三家」子会社や家庭用エアコン事業など、収益性が見劣りする事業は順次売却しました。
2009年3月期と2025年3月期を比べると、売上高はともに約10兆円規模ながら、本業のもうけを示す営業利益(2025年3月期は調整後)は1271億円から9716億円へと大きく増加し、構造改革の成果が数字にも表れています。 特殊要因を除いたコアフリーキャッシュフローも2025年3月期に7805億円を生み出す企業体質へと変貌し、日立は事業売却で3兆円超を得る一方、買収にも3兆円超を投じて成長分野への集中を進めてきました。 今回の白物家電譲渡は、こうした「入れ替え」の流れにおける最後の大きな消費者向け事業の売却と位置づけられます。
日立の徳永俊昭社長は、かつて家電事業トップを務めた経験を持ち、社内にはブランド力や人材採用面での影響を懸念する声もあったとされますが、収益性の底上げが難しい中で、より成長性の高い領域に経営資源を振り向ける判断を下した形です。 一方のノジマは、これまでの「売る側」から開発・製造まで一体で手がける体制へと転換し、日立ブランドの高付加価値家電を軸に収益拡大を狙います。
雇用維持とブランド継続、両社の思惑
今回の取引では、雇用とブランドの継続が大きな焦点となっています。 日立とノジマは、日立GLSの従業員の雇用維持や「日立」ブランドの継続活用を打ち出しており、ノジマは日立ブランドの信頼性を生かして商品力と販売力を強化する方針です。 これにより、消費者にとっては当面、冷蔵庫や洗濯機などで「日立」ブランドが維持される見通しであり、販売チャネルの拡大と合わせてラインアップの強化が期待されます。
ノジマは、製造から販売まで一気通貫で手がけることで、利益率の高い高付加価値家電に軸足を移し、薄利多売に陥りがちな量販店モデルとの差別化を図ろうとしています。 2025年にパソコンブランド「VAIO」を買収するなど、自社グループ内に開発機能を取り込んできた流れの延長線上に今回の買収が位置づけられます。 国内外で安価なアジア勢と高付加価値品の二極化が進む中、ノジマは日立ブランドをテコに後者のポジション確立を目指す戦略です。
一方の日立にとっては、白物家電事業の譲渡によって、BtoB中心の「社会イノベーション事業」に経営資源をさらに集中し、ルマーダを軸にしたIT・エネルギー・鉄道などでの成長投資を加速させる狙いがあります。 潤沢なフリーキャッシュフローを背景に、今後も国内外でのM&Aを通じた規模の拡大と収益力強化を追求していく見通しであり、「脱・家電メーカー」を掲げた長期的な構造改革は、今回の取引で一つの到達点を迎えたといえます。












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