
パスポートの申請手数料を引き下げる改正旅券法が参院本会議で全会一致により可決・成立し、2026年7月1日の申請分から新たな料金体系が適用される見通しです。
18歳以上が取得できる有効期間10年のパスポートは、オンライン申請の場合、現在の1万5900円前後から8900円へと約44%引き下げられます。 窓口申請でも、現行約1万6000円超から9300円に下がる予定で、最大7000円程度の軽減となります。
一方、18歳以上向けの5年用パスポートは制度そのものが廃止され、成人は10年用に一本化されます。 5年用は18歳未満のみの発給とし、現行で年齢により分かれていた手数料を一律約4400~4800円水準に引き下げる方針です。
外務省は、有効な一般旅券数が約2193万冊にとどまり、日本人のパスポート保有率が2割弱と主要国に比べ著しく低い現状を課題視しています。 政府は今回の値下げにより、若年層を中心に海外渡航のハードルを下げ、国際交流を後押ししたい考えです。 改正法の附則には、施行から3年程度をめどに制度を見直す規定が盛り込まれ、値下げ効果や申請状況を検証したうえで、さらなる負担軽減も検討するとしています。
また、手数料引き下げに伴う財源として、現在1回の出国につき1000円が課されている国際観光旅客税(いわゆる「出国税」)を3000円へ引き上げ、その増収分を旅券手数料の減額やオーバーツーリズム対策などに充てる方向です。 外務省は、制度変更に伴う問い合わせ増加を見込み、6月1日から省内に「パスポート相談特設ダイヤル」を設置し、24時間体制で申請方法などの相談に応じる方針も示しています。
取得促進と円安の逆風 保有率底上げへ課題も
今回の大幅値下げは、日本人の低いパスポート保有率を底上げする狙いがありますが、円安など海外旅行を取り巻く環境は依然として厳しい状況です。 外務省によると、コロナ禍前の2019年に約451万冊だった年間発行数は、2025年時点で約362万冊と回復しきっていません。 為替市場では、2022年初めに1ドル=115円前後だった水準が、その後急激に円安が進行し、足元では160円近辺にまで下落しました。 旅行会社JTBの調査では、2026年に海外旅行へ行かないと回答した人のうち約2割強が「円安だから」と理由を挙げており、費用面の負担感が渡航意欲を抑えている実態もうかがえます。
それでも、政府・与党内では、諸外国と比べて高かった申請費用を是正することで、「行こうと思った時にパスポートがない」状態を減らし、中長期的に海外渡航者の裾野拡大につなげたいとの声が強いです。 日本の申請手数料は、韓国や台湾と比べてこれまで1万円前後高いと指摘されてきましたが、今回の改定で主要国水準に近づくとみられます。
一方で、出国税引き上げにより実際の海外旅行コストは増える側面もあり、「パスポート取得のハードルは下がるが、渡航そのものの総費用は上がりかねない」との見方もあります。 外務省は、パスポート相談ダイヤルの設置などで申請手続きの不安を軽減しつつ、需要の動向を注視する構えです。 今後は、為替動向や旅行需要の回復ペースも踏まえながら、3年後の制度見直しでどこまで追加的な負担軽減や制度改善を図れるかが焦点となります。
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