
新型コロナウイルス感染症対策において、身近な医薬品の新たな可能性が示されました。北海道大学歯学研究院の樋田京子教授(血管生物分子病理学)らの研究グループは、喉の炎症などを抑える「医療用トローチ」を新型コロナウイルス患者がなめることで、唾液中のウイルス量が一時的に低下する可能性があると発表しました。この研究結果は、効果的な感染防止策につながるものとして期待されています。
新型コロナウイルスは、口腔内の粘膜や唾液腺の上皮細胞で増殖し、せきやくしゃみなどの飛沫が周囲に飛ぶことで感染が拡大します。そのため、感染を食い止めるには口腔内のウイルスを減らすことが重要な課題とされてきました。
研究グループは、重症化リスクの高い変異株「デルタ株」が猛威を振るっていた2021年8月、札幌市の新型コロナウイルス患者34人を対象に調査を行いました。患者には、殺菌成分であるセチルピリジニウム塩化物水和物(CPC)を含む医療用トローチを服用してもらい、その唾液を採取して分析しました。CPCは、洗口液や喉用スプレーといった口腔ケア製品に広く使用されている成分ですが、実験で用いられた医療用トローチには市販品の2〜4倍にあたる1錠あたり2ミリ・グラムのCPCが含まれています。
分析の結果、医療用トローチを服用した患者の唾液中に含まれるウイルスの遺伝物質(RNA)量は、服用前に比べて平均で4分の1まで減少していることが判明しました。これにより、感染リスクを一時的に低減させられる可能性が確認されました。一方、同じCPCを含む洗口液を使用した患者もいましたが、こちらではRNA量に変化は見られませんでした。洗口液は使用後に吐き出してしまうため、効果が十分に発揮されなかったと推測されています。
樋田教授は、医療用トローチの有効性について「今後出現する新たなウイルス株でも効果が見込める」と説明しています。論文は、歯科基礎医学会の専門誌電子版に掲載されました。
後遺症「ブレーンフォグ」の増加と今後の実用化に向けた課題
新型コロナウイルスに関しては、感染そのものだけでなく、長期化する後遺症も深刻な問題となっています。読売新聞の報道によると、記憶障害や集中力低下を引き起こす「ブレーンフォグ」(脳に霧がかかったようにぼーっとする状態)の症状を訴える人が増加しており、感染から長期間が経過しても社会生活や仕事に支障を来すケースが報告されています。感染によるリスクを少しでも減らす上で、ウイルスの増殖や飛散を抑制する手立てはますます重要性を増しています。
医療用トローチの実用化について、樋田教授は「老人介護施設や医療現場での感染リスク低減に寄与できるかもしれない」と期待を寄せています。飛沫感染のリスクが高い環境下で、手軽にウイルス量を抑えられる手段として有用性が高いと考えられるからです。
ネット上では、「トローチなら高齢者でも使いやすい」「手軽な感染対策として市販化にも期待したい」「効果の持続時間がどれくらいか知りたい」といった声が寄せられています。今後は、大規模な臨床試験でのさらなる検証を経て、実用化に向けた動きが加速することが期待されます。








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