
東京科学大学は、研究者の代わりにロボットが科学の実験を担う国内最大級の自動実験施設を15日に稼働させました。細胞の培養や遺伝子の検査といった実験を人間の100倍の効率で進めることができ、人手不足に対応しつつ、がんや再生医療などの研究を大きく加速させることが期待されています。
東京科学大学の湯島キャンパスに開設された施設には、計10の研究プロジェクト向けに、安川電機が開発した双腕ロボット「まほろ」などが計10台導入されました。ロボットはピペットを使った試薬の混合や細胞の培養、遺伝子の解析などを自動でこなし、夜間や休日も休みなく24時間作業を続けます。研究者が実験内容を設定して帰宅すれば翌朝には結果が得られるため、同大の神田元紀教授は「実験を進める効率は人間の約100倍だ」と述べています。28年にはロボットを20台に増やし、40年までに約2000台を導入する計画です。
また、信州大学も4月上旬に新たな自動実験施設を稼働させました。双腕ロボットを10台程度、単腕ロボットを100台ほど導入し、素材の合成から評価までを自動で担います。新型コロナウイルスの流行を契機として、手嶋勝弥卓越教授らは、過去50年間分の10万件のデータなどをもとに高機能な素材や化成品を合成する方法などを探る専用アプリを開発し、ロボットを活用しています。
こうした取り組みは海外で先行しています。英リバプール大学などは単腕ロボットを使い、8日間で688回の実験を繰り返して従来の6倍以上の活性を持つ化合物を見つけ、20年に英科学誌「ネイチャー」で発表しました。カナダ政府による23年のトロント大学への資金援助や、トランプ米大統領が25年に署名したAIを用いた科学研究加速の大統領令など、国家規模での後押しも進んでいます。
米国の新興企業の動きも活発で、米グーグルのグーグル・ディープマインド出身者がピリオディックラボを設立したほか、アマゾン・ドット・コム創業者のジェフ・ベゾス氏が設立したプロジェクト・プロメテウスが25年に約62億ドル(約1兆円)を調達しました。調査会社のグローバルインフォメーションによると、科学研究などを自動化するシステムの世界市場は30年に26年比で4割増の約122億ドル(約1兆9000億円)に達する見込みです。
AIとロボットが変える研究環境と国の推進策
日本国内でも、文部科学省がAIを活用した自動実験施設の整備を推進しています。同省は3月に、24時間稼働する自動実験拠点を5年間で少なくとも3拠点ほど設置する方針案を示しました。拠点の整備を通じて国内外の優秀な人材をひき付け、日本の科学力の向上に繋げる狙いがあります。
政府の有識者会議に参加する東京大学の一杉太郎教授は、「今後3〜4年程度で自動実験施設が大きく発展する可能性がある」とみています。一杉太郎教授らの調査によると、自動実験施設に関わる世界の論文数は20年ごろから増え始め、25年には24年比で約3倍の153本に達しました。
実験を担うロボットが普及すれば、研究者は空いた時間を研究の構想立案や学生の教育に使うことができます。特に日本は少子高齢化の影響で研究者の確保が難しくなる懸念があるため、科学研究を担うロボットの導入などを急ぐべきだと一杉太郎教授は指摘しています。


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