大阪市、障害者就労支援不正の絆HDを刑事告訴検討 加算金約110億円未返還で法的対応強化へ

大阪市、障害者就労支援不正の絆HDを刑事告訴検討 加算金約110億円未返還で法的対応強化へ

大阪市の福祉関連会社「絆ホールディングス(HD)」が運営する就労継続支援A型事業所による障害者就労支援の加算金不正受給問題で、大阪市が同社への刑事告訴・告発を検討していることが分かりました。 市は3月、同社グループの4事業所が障害報酬の加算を制度の趣旨に反する形で受給していたとして、支払済みの報酬にペナルティーを上乗せした約110億円の返還を求めましたが、期日までに納付は行われていません。 大阪市は不正の態様や金額の大きさを踏まえ、「重大事案」との認識を示し、刑事責任の追及も視野に入れて対応を進めています。

不正が指摘された4つの就労継続支援A型事業所は、障害のある利用者を一時的に事業所内の「スタッフ」として雇用し、一定期間が過ぎると再び「利用者」に戻す手法を繰り返していました。 障害者が半年以上継続して勤務した場合に支給される就労実績に応じた加算金を、同じ人に対して複数回受け取ることが可能になる仕組みを利用していたとされています。 市は、こうした運用は継続的な支援を行う事業所を後押しするという加算制度の趣旨に反すると判断し、障害者総合支援法に基づき5月1日付で4事業所の指定取り消し処分を決定しました。

不正受給額は、加算分を中心に大阪市分だけで約110億円に上り、国や他自治体分も含めると総額は約150億円規模に達するとの指摘もあります。 大阪市は3月に返還を命じ、4月20日を納付期限としていましたが、絆ホールディングス側は応じず、返還請求の取り消しを求めて大阪地裁に提訴しました。 これを受け、市は今後、民事訴訟と並行して刑事告訴・告発に踏み切るかを検討しており、障害福祉サービスをめぐる前例の少ない大規模不正として、行政・司法双方の対応の行方が注目されています。

利用者・現場への影響と広がる波紋 就労支援制度の信頼回復が課題に

今回の問題では、利用者への支援の実態が十分でなかったとの証言も相次ぎ、制度の信頼が大きく揺らいでいます。 就労継続支援A型は、一般企業での就労が難しい障害のある人に対し、雇用契約を結んだうえで働く場と支援を提供する公的制度で、全国に約2万2千カ所の事業所が設置されています。 本来は、個々の障害特性に応じた作業やサポートを通じて、社会参加やスキルアップを図り、一般就労への橋渡しを行うことが目的です。 しかし、絆ホールディングスの事業所では、元利用者から「支援はほとんど自習で、YouTube視聴などが中心だった」「働いている実感がなかった」といった証言も出ており、給付金を得ることが主目的だったのではないかとの疑念が強まっています。

大阪市は、指定取り消しに伴う利用者の受け皿確保を急いでおり、他事業所や関係団体と連携して、通所先や就労支援が途切れないよう調整を進めています。 一方、就労支援の現場からは、「福祉事業ではなく営利目的の事業所が増えた」「給付金目当ての参入が相次いでいる」といった危機感も示されています。 北海道で別の就労継続支援事業所の役員が虚偽申請による給付金詐取容疑で逮捕されるなど、同種の不正も全国で報告されており、障害福祉サービスの「ビジネス化」への懸念は高まる一方です。 今回、大阪市が刑事告訴・告発を視野に入れたことで、悪質な不正に対する抑止力をどう確保するか、国や自治体に制度運用と監督体制の見直しが求められています。

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. イランの国旗
    イランの最高指導者であるモジタバ・ハメネイ師は、8月28日に公表した公式声明において、国家の安定と社…
  2. 厚労省、残業「月45時間以内」の一律指導を見直しへ 9月から健康確保措置を重点確認
    厚生労働省は、労働基準監督署が企業に対して行ってきた時間外・休日労働に関する指導を、9月1日から見直…
  3. ロシアの侵攻から4年が経過したウクライナの国旗
    ロシアのプーチン政権によるウクライナ侵攻は、2026年2月24日で開始から丸4年。犠牲者の数は増え続…

おすすめ記事

  1. 熊本刑務所の銘板

    2026-8-10

    刑罰から自立支援へ。無期懲役の受刑者が3割を占める熊本刑務所が見据える未来

    受刑者の約3分の1が無期懲役受刑者。出所というゴールが見えない「終わりのない更生」について、熊本刑務…
  2. ビクトリア刑務所(香港)当時の写真「大館(Tai Kwun)」 (1)

    2025-12-27

    写真で見るビクトリア刑務所(香港)当時の写真「大館(Tai Kwun)」

    1841年8月に建設され、2006年に完全に廃止されたビクトリア刑務所。現在は、文化施設「大館(Ta…
  3. 精神障害受刑者処遇・社会復帰支援モデル事業「札幌刑務所精神科リカバリーユニット(略称「PRUS」プラス/愛称「IPPO」いっぽ」)」で行われている受刑者のグループワーク

    2025-9-7

    「楽しい」時間が受刑者の心を開く。札幌刑務所モデル事業のグループワークが目指す未来

    精神障害を持つ受刑者に対する精神障害受刑者処遇・社会復帰支援モデル事業「札幌刑務所精神科リカバリーユ…

2026年度矯正展まとめ

2026年度 矯正展まとめ

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る