ホルムズ海峡の代替ルート稼働 日本向けタンカー11隻の半数超がUAE・フジャイラを出港

アラブ首長国連邦の石油を積んだタンカー

イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖が長期化する見通しとなるなか、日本政府は海峡を通過しない代替ルートを利用した中東産原油および石油製品の調達を強化しています。こうしたなか、5月1日の時点で計11隻のタンカーが代替ルートを経由して日本へ向かっているとみられることが明らかになりました。

船舶の位置情報を公開するウェブサイト「マリントラフィック」などから商船の動きを分析している東京大学大学院の渡邉英徳教授(情報デザイン)によりますと、同日時点で11隻のタンカーがホルムズ海峡を通らずに中東方面から日本へ向かっています。このうち半数を超える7隻は、アラブ首長国連邦(UAE)の北東部に位置するフジャイラを出発したものです。、UAEは独自の中東戦略や増産を見据え、同日付で石油輸出国機構(OPEC)およびOPECプラスからの脱退を発効させており、その動向が世界的な注目を集めています。

日本政府が新たなエネルギー調達の拠点として有力視しているのが、このフジャイラです。中東協力センターの資料が示す2026年1月公表の財務省貿易統計によれば、UAEは2025年における日本の原油輸入の約43%を占める最大の調達先となっています。これまで日本の原油輸入はペルシャ湾内からの積み出しが主力となっていましたが、フジャイラはホルムズ海峡の外側にあるオマーン湾に面しているため、イランによる海峡封鎖の影響を受けにくいという地理的な強みがあります。

また、11隻のうち残る4隻は、サウジアラビアの西側に位置する紅海を経由するルートを航行しています。サウジアラビアは東部の油田地帯から紅海側のヤンブー港まで原油を送るパイプラインを稼働させており、これもホルムズ海峡を迂回する重要な代替手段です。ペルシャ湾内に依存してきたこれまでのエネルギー供給網が、複数ルートの運用へと移行しつつあることが、今回のタンカーの動きからも裏付けられました。

政府の対応と原油サプライチェーンの再構築に向けた課題

首相官邸の幹部も、複数のタンカーがすでにフジャイラなどから原油を積載して日本に向かっている事実を把握していることを、報道陣の取材に対して明らかにしました。日本政府は、代替ルートを利用したタンカーが国内に到着するまでの時間差を埋めるため、国家備蓄原油の放出にも踏み切っています。一部の報道にあるように、5月1日からは備蓄放出の第2弾として、国内需要の約20日分に相当する580万キロリットルの放出が開始されました。

しかしながら、ホルムズ海峡を迂回するパイプラインの輸送容量には物理的な限界が存在します。フジャイラへ通じるUAEのパイプラインや、紅海へ抜けるサウジアラビアのパイプラインをフル稼働させたとしても、平時にホルムズ海峡を通過していた原油の総量を完全に補うことは困難とされています。

日本政府は当面の危機を乗り切るための代替ルート確保を急ぐとともに、中長期的な視点に立った非中東圏からの調達拡大など、エネルギー安全保障の根幹に関わるサプライチェーンの再構築という重い課題に直面しています。

アラブ首長国連邦(UAE)の石油輸出国機構(OPEC)とOPECプラス脱退についての詳細は下記記事をお読みください。
https://tokyonewsmedia.com/archives/21800

関連記事

コメントは利用できません。

最近のおすすめ記事

  1. 【医師の論文解説】阪神優勝で認知症が改善?ファンの行動・心理症状(BPSD)への好影響
    好きなスポーツチームの優勝は、認知症の症状改善につながるのか。応援するチームの活躍が、ファンの認知機…
  2. アメリカ合衆国の国旗
    米財務省は8月19日、残存期間が10年から30年の長期名目利付国債を対象とした流動性支援目的の買い戻…
  3. 首相官
    半導体メモリー大手のキオクシアと米サンディスクのトップが8月27日に首相官邸を訪問し、高市早苗首相に…

おすすめ記事

  1. パブリックアート作品

    2025-12-31

    写真で見るカフェやレストラン、個展など「大館(Tai Kwun)」

    「大館(Tai Kwun)」には、多くのレストランやカフェなどのショップがあり、イベントや展示会など…
  2. 服役中に亡くなった受刑者の対応について東京報道新聞が取材した宮城刑務所の分類審議室で働く職員さん

    2024-10-31

    服役中に亡くなった受刑者はどうなる?宮城刑務所分類審議室の職員に聞く

    受刑者は全員が刑期を終えて出所できるとは限りません。健康上の理由で極めて重篤な状態に陥ったり、あるい…
  3. ビクトリア刑務所(香港)当時の写真「大館(Tai Kwun)」 (1)

    2025-12-27

    写真で見るビクトリア刑務所(香港)当時の写真「大館(Tai Kwun)」

    1841年8月に建設され、2006年に完全に廃止されたビクトリア刑務所。現在は、文化施設「大館(Ta…

2026年度矯正展まとめ

2026年度 矯正展まとめ

【結果】コンテスト

【結果発表】ライティングコンテスト企画2025年9-10月(大阪・関西万博 第4回)

アーカイブ

ページ上部へ戻る