
イラン戦争の長期化に伴い、日本経済を下支えしてきた石油化学原料「ナフサ」の逼迫が鮮明になってきました。政府は備蓄放出や中東以外からの調達で「日本全体として必要量は確保できている」と繰り返し説明していますが、現場では樹脂や塗料、シンナーなどナフサ由来製品の供給不安が相次いでいます。
背景にあるのは、中東情勢の悪化によるホルムズ海峡の封鎖で、日本が輸入するナフサの多くを占める中東産の輸送に支障が出ていることです。日本はナフサ輸入の約74%を中東に依存しており、国内の在庫は約20日分程度です。
政府は、国内精製所の稼働維持や代替調達を通じ「マクロでは量を確保している」と強調。備蓄原油の精製や中東以外からの調達、中間化学製品の在庫活用により、年を越えて供給を継続できる見込みだと説明しました。しかし実際には、企業ごとに必要とするナフサの種類や成分が異なり、「必要な種類が必要な場所に届かない」というミクロのミスマッチが顕在化しています。
建設業界では、ナフサを原料とする塗料や断熱材、防水材、塩ビ管などで出荷制限や受注停止が広がり、一部工事で中止・遅延が起きています。影響は建設業界にとどまりません。プラスチック容器や合成繊維、洗剤などはナフサから作られる基礎化学品を原料としており、食品容器や自動車部品にも影響が及んでいます。
実際に、食品メーカーの中にはプリン容器などの確保に不安を抱え、出荷や販売計画の見直しを迫られている企業もあります。政府は一部事業者による過剰発注が流通の目詰まりを招いていると指摘しており、前年同月同量を基本とした調達を呼びかけている状況です。
値上げ圧力と長期対応 家計への波及はこれから本格化か
ナフサ不足の影響は、今後、消費者物価として本格的に表面化していく見通しです。野村総合研究所の試算によると、ナフサ由来製品の価格上昇による家計負担は年間で1.8万〜2.6万円程度に達する可能性があります。包装材や日用品など「生活必需品」分野での影響が大きいと分析しています。
すでに化学メーカー各社は、プラスチック製品などの値上げを相次いで発表。生活産業関連企業の調査では、44.1%の企業が「すでに事業への影響が発生している」と回答し、対応策として72.5%が「値上げ」を挙げました。
長期的には、異なる種類のナフサにも対応できる生産体制の柔軟化や、サプライチェーン全体で情報共有を進め、過剰な買いだめの抑制に取り組むことが求められるでしょう。同時に、エネルギー安全保障の観点から中東依存を減らし、多様な調達先を確保していく戦略が改めて問われています。












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