緊急避妊薬、市販3カ月も中高生に高い壁 心理的負担と高価格が影響

緊急避妊薬、市販3カ月も中高生に高い壁 心理的負担と高価格が影響

性交後の予期せぬ妊娠を防ぐ緊急避妊薬(いわゆるアフターピル)が薬局で購入できるようになってから、およそ3カ月が経過しました。厚生労働省が承認したレボノルゲストレル錠「ノルレボ」(第一三共ヘルスケア)が2月2日に国内で初めてスイッチOTC化され、全国の薬局などで処方箋なしに入手できるようになったことは、避妊に失敗した人や性被害を受けた人の選択肢を広げる一歩となりました。一方で、年齢制限や保護者の同意は不要とされるものの、実際に利用する中高生ら若年層にとっては心理的・金銭的なハードルが依然として高く、制度の趣旨が十分に果たされていないとの指摘も強まっています。

緊急避妊薬は、性交後できるだけ早く服用することで高い確率で妊娠を防ぐとされ、国際的にも予期せぬ妊娠のリスクを減らす重要な手段と位置付けられています。日本では当初、医師の処方箋がなければ入手できず、1回あたり1万~2万円程度とされる費用の高さも課題となってきました。市販化後に設定された希望小売価格は1錠あたり約7000~7500円で、全国約8000店舗の薬局で取り扱われていますが、収入のない未成年にとっては依然として大きな負担です。NPO法人が実施した調査でも、15~24歳の若者のうち「緊急避妊薬は入手しやすい」と答えたのはごくわずかにとどまり、価格面に加え、周囲に相談しづらいことや購入時の恥ずかしさなど、複合的な要因が障壁になっている実態が浮かび上がっています。

さらに、市販の緊急避妊薬は薬剤師の対面による情報提供と、その場で服用する「面前服用」が原則とされており、プライバシーへの配慮が十分でない店舗では若者の利用をためらわせる要因となっています。相談窓口に寄せられた事例の中には、「今ならお年玉があるから買える」と、期間限定の臨時収入をあてにして薬代を工面しようとする高校生の声もあり、必要なときにいつでも手に取れる状況には程遠い現状がうかがえます。背景には、避妊や性暴力、同意といったテーマを家庭や学校で話題にしづらい社会の空気が根強く、知識や情報にアクセスできるかどうかが、その後の人生を左右しかねないギャップとなって表れていることも見逃せません。

予期せぬ妊娠に気付きながら誰にも相談できず、中高生が一人で出産し、その後に乳児遺棄事件へと発展するケースも各地で後を絶たないと指摘されています。埼玉県行田市では今年3月、自宅敷地内に出産直後の乳児の遺体を埋めたとして、女子中学生が死体遺棄容疑で逮捕される事件が発生し、精神的に追い詰められた末の行動だった可能性が報じられました。こうした事案は、緊急避妊薬の入手性だけでなく、そもそも性とからだについて学び、困ったときに頼れる大人や窓口につながれる環境づくりの遅れを浮き彫りにしています。

性教育と公的支援の強化求める声

現場で相談支援に携わる団体からは、学校現場での包括的な性教育の拡充と、公費による費用負担の軽減を求める声が高まっています。性教育の普及に取り組むNPO法人は、10代の相談者の中で緊急避妊薬の存在や正しい使い方を知っているケースは一部に限られ、「そもそも選択肢があることを知らずに妊娠に至る若者が少なくない」と訴えています。また、保護者の約8割が「避妊や性的同意を含む幅広い性教育を中学校までに教えるべきだ」と回答した調査結果もあり、社会全体で知識を共有する必要性が示されています。

海外では、緊急避妊薬を数百円から5000円程度で購入できる国や、未成年に無償提供する制度を設ける国もあり、日本との環境の差が指摘されています。国内でも、自治体が医療機関と連携し、10代向けに緊急避妊薬の費用助成や相談体制の整備を進める動きが一部で始まっていますが、地域差は大きく、全国的な制度としてはまだ途上です。専門家からは、緊急避妊薬を「特別な薬」として遠ざけるのではなく、人生と健康を守る一つの選択肢として位置付け、経済状況や家庭環境にかかわらず必要な人に届く仕組みづくりが不可欠だとの指摘が相次いでいます。市販化から3カ月が過ぎた今、アクセス改善の成果とともに、見えにくい「高い壁」をどう取り除いていくのかが問われています。

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