
ソフトバンクの先端技術研究所では、通信の空白地帯を解消する成層圏通信プラットフォーム「HAPS(High Altitude Platform Station)」の本格的な運用に向け、超軽量な次世代蓄電池の開発を推進しています。2026年には米国Sceye(スカイ)社の機体を用いた日本国内でのプレ商用サービス開始が予定されており、機体を長期間滞空させるための革新的なエネルギー基盤の構築が急務となっています。
一般的なスマートフォンや電気自動車(EV)で用いられるリチウムイオン電池は、数千回の充放電に耐えるサイクル寿命が重視されます。しかし、半年に1度の交換運用を想定するHAPSにおいて最も重要なのは、単位重量あたりの容量を示す「重量エネルギー密度(Wh/kg)」です。同社は200サイクル後に400Wh/kgを維持できる電池を市場に求めていましたが、該当製品が存在しなかったため、自ら開発に乗り出しました。
これまで、国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)との空気電池の研究や、リチウム金属電池の開発を進めてきました。しかしリチウム金属電池は寿命向上のために重い拘束部材が必要になる課題があり、現在はさらに高出力な600Wh/kg級を目指し、希少金属(レアメタル)を一切使用しない「有機正極二次電池」の開発へと研究の主軸をシフトしています。現行の電池に不可欠なコバルトやニッケルは資源供給の不安や高コストがネックですが、炭素や水素などの有機材料は豊富で低コストかつ軽量という大きな利点を持っています。
有機正極二次電池の実用化に向けては、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)などの専門機関と強力なタッグを組み、これまで電池メーカーが単独で突破できなかった技術的ハードルの解消に取り組んでいます。資源を海外に依存しない脱レアメタルの蓄電池技術は、次世代の空のインフラを支える切り札として世界中から熱い視線が注がれています。
有機正極特有の課題克服と、国家プロジェクトが後押しする500Wh/kgへの道
有機正極二次電池は、活物質が電解液に溶け出して容量が早期低下する点や、抵抗が高く大きな電流を取り出せないといった課題があり、開発を手掛ける企業は少数でした。しかし、産総研と共同で開発した「オリゴマー化技術」によって正極の溶解を抑制することに成功し、電極構造の改良によってレート特性(出力性能)を大幅に向上させる見込みを得ました。
この確かな技術的進展は国からも高く評価されており、防衛装備庁の「安全保障技術研究推進制度」にも採択されています。このプロジェクトを通じて、ソフトバンクは重量エネルギー密度が500Wh/kgを超える長寿命な有機正極二次電池の実現を掲げています。2026年から本格始動するHAPSの国内サービスと連動して、最新の計算科学を活用しながら、資源制約のない次世代バッテリーの早期実用化が着実に進んでいます。








-280x210.png)



-300x169.jpg)