9価HPVワクチン接種で男性の頭頸部がんリスクが半減 奈良県総合医療センターの研究チームが発表

ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐ「9価HPVワクチン」

ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染を防ぐ「9価HPVワクチン」を接種した男性は、未接種の男性と比較して、頭頸部がんの発症リスクが5割近く減少するという画期的な研究結果が発表されました。この研究は、奈良県総合医療センターの北野泰斗・小児科医長らのチームがまとめたもので、米国の大規模データベースを活用して統計的な分析を行ったものです。

研究チームは、9歳から26歳の男性約290万人を対象に、最長10年間にわたる追跡調査を実施しました。その結果、少なくとも1回以上の9価ワクチン接種を受けた約61万5千人は、未接種の約229万人と比較して、頭頸部がんの発症リスクが46%減少したことが明らかになりました。年齢層別では、9〜14歳の接種で42%、15〜26歳の接種では50%のリスク低下が確認されており、若い時期の接種が極めて有効であることが示されています。

HPVは主に性交渉を通じて皮膚や粘膜に感染するウイルスで、200種類以上の型が存在します。女性の子宮頸がんの原因として広く知られていますが、男性においても中咽頭がんなどの頭頸部がん、肛門がん、陰茎がん、および尖圭コンジローマの原因となることが分かっています。特に近年、喫煙や飲酒を原因としない「HPV関連の中咽頭がん」が男性の間で急増しており、今回の研究は、ワクチン接種がこれらの疾患を予防するための強力な手段であることを裏付けるものとなりました。

現在、日本においてHPVワクチンは小学6年から高校1年相当の女性を対象とした「定期接種」となっており、公費による無料接種が可能です。しかし、男性については全額自己負担の任意接種となっており、3回の接種を完了するためには約10万円の費用が必要となります。この費用負担の大きさが、男性の接種率向上の障壁となっている現状があります。

世界の潮流と日本における「男性定期接種化」への議論

世界に目を向けると、HPVワクチンの男性への定期接種はすでに一般的なものとなっています。世界80カ国以上で男性への公費助成が導入されており、主要7カ国(G7)の中で男性を定期接種の対象外としているのは日本だけです。米国、英国、カナダ、オーストラリアなどの諸国では、男女双方が接種を受けることで社会全体のウイルス蔓延を防ぐ「集団免疫」の形成を目指す戦略がとられています。

今回の研究結果について、北野医師は「9価ワクチンは思春期や若年成人の男性において頭頸部がんの予防に大きく貢献している」と指摘し、日本においても男女を問わないワクチン接種戦略を後押しする有力な根拠になり得ると述べています。実際に、日本国内でも一部の自治体が独自に男性への接種費用助成を開始する動きが出ており、国レベルでの定期接種化を求める声が医療現場からも高まっています。

厚生労働省の専門部会では、男性への定期接種化について費用対効果やワクチンの供給体制を考慮した議論が続けられています。今回の「リスク半減」という具体的な数値は、今後の政策判断に大きな影響を与える可能性があります。

ネット上では、「男性も原因になるなら早く公費対象にしてほしい」「10万円は高すぎて手が出せない」「娘だけでなく息子にも打たせるべきか悩んでいたが、この数字を見ると前向きに考えたい」といった、公費助成の拡大を期待する意見が多く見られます。また、「子宮頸がんだけでなく、他のがんも防げるという認識が広まってほしい」といった、啓発の重要性を指摘する声も上がっています。

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