- Home
- コラム・インタビュー, マネー・ライフ
- リーゼント刑事が現場で対峙したドラッグの現実【後半】〜日常を壊す最新ドラッグの魔力〜
リーゼント刑事が現場で対峙したドラッグの現実【後半】〜日常を壊す最新ドラッグの魔力〜
- 2026/5/7
- コラム・インタビュー, マネー・ライフ
- 日本, 違法薬物
- コメントを書く

おはようさん。リーゼント刑事こと秋山です。
春になると、街の雰囲気が変わります。新しいスーツを着た人や、どこか緊張した顔の若い人たちが増えてきて、「ああ、またこの季節がきたな」と感じます。新しい環境に入るというのは、楽しみもありますが、不安もあるものです。これからどんな毎日が始まるのか、どんな人と出会うのか、期待と同時に気持ちが揺れる時期でもあります。
そういう時期というのは、人がどこへ向かうのか、その「最初の一歩」がとても大事になります。刑事という仕事は、「靴」というのはとても大事なものです。どれだけ現場を歩いたか、どれだけ動いたか、そのすべてが靴に表れます。そして、その靴がどこへ向かうのかで、その人の行く先も変わってきます。
<目次>
薬物はすぐ近くに転がっている現実の話

私自身、2021年3月31日、愛する徳島県警を定年退職しました。42年間続けてきた刑事という仕事を、やり切った日でもあります。ひとつの人生に、きちんと区切りをつけた…そんな感覚でした。そしてそのまま私は、片道切符を手に東京へ向かいました。戻ることを前提とした一歩ではなく、ここから先の人生を、もう一度自分で切り拓くための一歩でした。
刑事としての人生には区切りをつけましたが、守るべきものがなくなったわけではありません。これからは、日本全国の人たちに対して、自分は何ができるのか…。その答えもわからないまま上京したことを覚えています。
ただ、東京に来てすぐ思ったのは、「守るべきものの形が変わった」ということでした。刑事の頃は、目の前の事件、目の前の人間を相手にしてきました。しかし今は違います。目の前にいない誰か、まだ出会っていない誰かにも伝えていかなければいけない。その中で、どうしても伝え続けたいものがあります。
それが「薬物」の問題です。刑事時代、何度も現場で見てきました。前回のコラムでも書きましたが、一度関わってしまったことで、人生が大きく狂ってしまう人間。本人だけではなく、その家族や周りの人間まで巻き込んでいく現実。あの光景だけは、何年経っても忘れることが出来ません。だからこそ今、自分の経験を言葉にして、一人でも多くの人に伝えていく必要があると感じています。
前回は、覚醒剤によって人生を狂わされた少年の話、そして現場で私が目の当たりにしてきた現実を書かせてもらいました。ああいう話をすると、よくこう言われます。「それは一部の人間の話でしょ?」と。しかし、現場にいた人間から言わせてもらうと、それは違います。むしろ逆です。あれは“特別な話”ではなく“どこにでも転がっている現実”です。
覚醒剤に限らず、薬物というのは、ある日突然、誰かの人生を壊すのではありません。静かに、確実に、人を壊していきます。そして気づいた時には、もう元には戻れないところまで来ている。それが、私が現場で何度も見てきた現実です。
だからこそ、この話を「ひとつの出来事」で終わらせてはいけないと思っています。なぜ、こんなことが起きるのか。今、薬物はどこまで変わってきているのか。ここで少し、視点を広げてみます。
日本にも忍び寄る最新ドラッグ

薬物は、もともと“日本の中の問題”ではありません。そして今、それがよりはっきりとした形で現れています。そして今の時代の薬物は、昔よりも危険です。昔は覚醒剤や大麻といった、ある程度名前がわかるものでした。しかし今は違います。
海外では、見た目も名前もどんどん変えた新しいドラッグが次々と出てきています。中には、お菓子のような見た目をしたものや、普通の液体にしか見えないものもあります。しかしその中身は決して「軽いもの」ではありません。
現在、世界ではさまざまな薬物が広がっています。たとえば、フェンタニルのようにごく少量でも命に関るものや、MDMAのように若者の間で広がりやすい錠剤型のもの、さらには成分を変えながら出回る合成カンナビノイドなど、見た目や名前を変えながら、次々と新しい薬物が生まれています。
これらに共通しているのは「何が入っているのか分からない」ということです。ですが、こうした話を「遠い世界の出来事」と思ってはいけません。薬物は、もうすでに私たちのすぐそばまで入り込んできています。
ただ、少しだけ現場の話をさせてください。薬物というと、「見た目ではわからない」と思っている人も多いと思います。確かに、ぱっと見では普通に見える人もいます。でも、長年現場にいると、「ああ、この人やってるな」と分かる習慣があるんです。それは特別な能力でも何でもありません。ただ、“くせ”が出るんです。
本人は隠しているつもりでも、体の動きや仕草、ちょっとした違和感にそれは出てしまう。こちらから見ると、意外と分かるものなんです。最後に、私が現場で見てきた、その“クセ”についてお話しします。
薬物使用者が隠しきれないクセ

私は刑事時代、覚醒剤に関わる現場を多く見てきました。その中で、ただ取り締まるだけではなく、「どうすれば見抜けるか」徹底的に研究しました。覚醒剤は興奮剤です。その影響は、人の行動に必ず現れます。
たとえば、携帯電話で通話しているとき。普通であれば自然な姿勢のはずが、覚醒剤使用者は違います。携帯電話を持っている側の脇が、不自然に90度ほど開く。一見すると些細な違和感ですが、現場ではこれを見逃しません。
車にも特徴が出ます。きれいに止めることができず、横着に、斜めに止める。私たちはそれを「シャブ止め」と呼んでいました。
さらに、車の前後のバンパーを見れば、細かな傷がついていることが多い。注意力や判断力が落ちているため、知らないうちに接触を繰り返しているのです。
私はまず、そうした止め方をしている車をみつける。次にバンパーを確認する。そして、運転手が現れたとき、携帯電話で話をしていて、脇が開いているかを見る。この3つがそろえば、迷わず職務質問に入ります。そして実際に、その多くが覚醒剤使用者でした。
テレビなどで、パトカーとすれ違った瞬間に挙動がおかしくなる車を見たことあると思います。あれは偶然ではありません。目をそらす。ハンドルをわずかに切る。アクセルやブレーキの踏み方が不自然になる。ほんの一瞬の動きですが、そのズレは隠せないのです。
私は現役時代、同じ男を3度、覚醒剤で逮捕したことがあります。結局、その男は刑務所の中で命を落としました。これが、私が見てきた現実です。
そしてもうひとつ、印象に残っている言葉があります。覚醒剤をやめられた人間に話を聴くと、こう言うのです。「覚醒剤より大切な存在ができた」と。たとえば、妻や子ども。守るべきものができたとき、人は変わることができる。ただ、その一歩の向きがすべてを分けます。
冒頭で書いた通り、私は42年の刑事人生に区切りをつけ、東京に来ました。片道切符でのスタートでした。あの時、自分で決めて踏み出した一歩です。人生はこの“一歩”で大きく変わります。現場で見てきた人間たちも同じです。ほんの軽い気持ちで踏み出した一歩が、取り返しのつかないところに進んでいく。違うのは、その一歩の“向き”だけです。
私は、自分で選んで前に進みました。しかし中には、気づかないうちに落ちていく一歩もある。だから最後に伝えたい。その一歩が、どこへ向かっているのか。それだけは、間違えないでほしい。一歩で人生は変わります。その先にある現実は、必ず自分が受けることになる。
現場で見てきた答えです。








-150x112.png)






の看板-280x210.jpg)
-280x210.png)

-300x169.jpg)