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- 「転職回数が多い人」こそ最強の即戦力?最新研究で判明した適応力の正体

転職回数が多い人は、採用市場で敬遠される傾向にある。しかし、実際のビジネス現場ではむしろ歓迎すべき人材であるという研究結果が報告された。職歴の多さは、高い適応能力と有能さを予見する指標になり得るという。
変化の激しい現代において、既存の価値観に縛られない柔軟さは強力な武器だ。企業の採用担当者は、職歴の数だけをリスクと捉えるべきではない。流動的なキャリアが生み出す「即戦力としての適応力」を正当に評価する視点が求められている。
<目次>
転職が多い者は適応力に優れている

いわゆる“5月病”の時期を迎えることになるが、時代はさらに進んでおり、ニュースでは今年の新入社員の“超早期退職”が話題にもなっている。昨今普及してきた退職代行サービスの利用などもあり、特に4月は新入社員を含めて退職代行サービスへの依頼が増えている実態が浮き彫りになっているようだ。
“超早期退職”であれ、研修期間直後の退職であれ、正式に入社した会社を辞めれば履歴書の職歴欄が1マス増えることになる。そしてもちろんその後も転職を繰り返せば職歴欄の記述は増える一方だ。
企業の採用担当者からすれば職歴の多い応募者にネガティブな印象を受けてしまうのは人情というものだろう。採用したとしても、またすぐに辞めてしまうのではないかという危惧を抱くのは尤もなことだ。
とはいえ当人にとって、その嵩んだ転職歴が不可抗力であったとしか感じられていないケースもあるはずである。当人的には退職から転職に到るプロセスは必然であったのかもしれない。
コーネル大学のレベッカ・キーホー氏が今年3月に「Academy of Management」で発表した研究では、転職を繰り返す者が新たな職場でいち早く業務に慣れ、組織の規範に効率的に適応し、わずか数カ月で目に見える成果を上げる可能性がじゅうぶんにあることを示唆している。
キーホー氏の研究によると、新しい仕事に就く頻度が高い者ほど、その新たな仕事の能力は向上するという。つまり着任初期のパフォーマンスの低下が少なく、より早く職場と仕事に慣れるというのである。また、別の組織に移ると一時的に業績が低下する者は多いが、最終的には業績は回復することが多いと、キーホー氏は言及している。
「従業員の異動頻度はかつてないほど高くなっています。企業は以前よりも早く人材を失い、より頻繁に採用せざるを得なくなっています。これにはコストがかかります。しかし異動を繰り返してきた従業員にとって、良い面もあるというのは興味深い点だと考えています」
研究では職場文化が大きく異なる職場や、長年メンバーが変わらない職場に加わった場合、異動によるメリットがさらに大きくなることも明らかになった。
転職で得られる属人的スキル「アンラーニング」

転職を複数回経験することで得られる視点は「アンラーニング(Unlearning)」であるという。
アンラーニングとは、過去の成功体験、時代遅れの知識とスキル、価値観を意図的に捨て去り(学習棄却)、新しい環境や状況に合わせて学び直すプロセスである。単に忘却することではなく、思考をリセットし目の前の障害を取り除いて成長軌道に乗ることが思い描かれている。
キャリアの転換には「既成概念を捨てる」期間が必要である。転職者が新しい組織の期待や業務の流れに完全に適応するためには、以前の職場での習慣、思い込み、プロセスを手放さなければならないため、アンラーニングが必要とされる。
このアンラーニングと、新しいスキルを習得する「リスキリング」を組み合わせることで、新たな職場環境により効果的に適応し、業績向上につなげられるということだ。
転職者にアンラーニングが備わっているのかどうかを検証するため、今回の研究ではアメリカにある2,000社以上のヘッジファンドに所属する8.500人を超えるヘッジファンドマネージャーの15年間にわたる月次データ(異動情報を含む)を分析した。
分析対象としてヘッジファンドを選んだのは、これらの企業は一般的に明確に定義された役職と責任を遵守し、投資資本に対する収益の最大化という共通の目標を持っているためである。
これにより個人間および企業間で役割、責任、業績指標を比較することが可能になる。さらにファンドマネージャーは多くの場合、その役割において大きな裁量権を持っているため、マネージャーの貢献度と投資収益の間には強い相関関係が見られる。
研究では彼らのパフォーマンスを評価するために、投資収益を反映するパフォーマンス指標である「ソルティーノ比率(Sortino Ratio)」を用いた。ソルティーノ比率は損失の可能性(マイナスの変動)のみを評価するため、より実戦的で特に高ボラティリティな資産運用のパフォーマンスを評価するのに有効であるとされている。
優れたファンドマネージャーが持つ新しい組織の社会環境に適応するスキルは、人々が転職する際に蓄積し、持ち越していく汎用性の高い「人的資本(human capital)」の一形態であることが突き止められた。つまりアンラーニングは転職や部署移動を通じて培われる属人的スキルなのである。
他社から移籍してきた新しいファンドマネージャーは、新しい役割で活用できる汎用性の高い職務スキルを持ち込むという利点がある一方で、以前の組織で身につけた企業特有の社会慣習を改めて学び直したり、調整したりする必要があるかもしれない。
大企業の戦略的な部署移動にも適用できる

この研究から得られる重要な教訓は、転職を繰り返す者は高い流動性という大きなメリットを持ち、特定の採用状況において組織にとって有益となる可能性があることだ。
キーホー氏によれば、採用担当者は「すぐに業務に慣れ、最初から効果的に業務を遂行できることが有利となる職種では、こうした人材を優先的に採用すべきです」という。これは高度な協調性が求められる職場や、長年メンバーが固定している職場において特に重要となる。
この異動によるメリットは、従業員を異なる部署に異動させることができる大企業にとっても重要な視点となる可能性がある。迅速な適応が重要でない部署への異動では、従業員は新しい職場環境に適応するスキルを時間をかけて習得できる一方、迅速な適応が重要な部署の場合、組織はより多くの異動経験を持つ従業員を優先したほうが明らかによいのだろう。
組織(人事部)が特定の社員に対し、部署間の異動の道筋を意図的に設計することで、組織の知識を維持しながら、社員の適応力と能力開発を促進することができる。
ビジネス環境の変化が速い時代を迎えている現在、従業員が時代にあわせて不要な価値観にとらわれず新たなスキルを身につけることに意欲的になれば、変化に強い組織づくりが実現できる。
イノベーションの創出、業務効率化を行いやすい風土が社内にできれば組織の成長速度を高められる。人材と組織の成長が互いに相乗効果をもたらし、業績が上がることで従業員の満足感にもつながるなどポジティブな循環が起こり、組織にさまざまなメリットが得られる。
キーホー氏は「個人にとってこの研究は、私たちがキャリアを通じて経験し、持ち続けるさまざまな種類の学習の重要性に新たな光を当てるものです」と総括している。
もちろん転職を推奨することはできないものの、転職を通じて得られる体験がその後のキャリアにポジティブに生きてくる可能性は大いにありそうだ。転職が多い個人においても、企業の採用担当者においてもこの観点をよく理解し、Win-Winの関係性を築き上げてほしいものである。
※研究論文
Movin’ and Groovin’! Increased Prior Mobility Facilitates Newcomers’ Transitions Into Organizations









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