
ソフトバンク株式会社が人工知能(AI)サーバーの開発と生産事業への参入を検討していることが明らかになりました。同社は主要部品の設計や最終組み立てに2020年代末までに参入する計画で、米半導体大手のエヌビディアや台湾の鴻海精密工業とサーバーの開発や生産に関する協議を開始しています。
経済安全保障の観点から、AIインフラを国内で整備する重要性が高まっていることが参入の背景にあります。AIの急速な普及に伴い、機密データの国外流出を防ぐため自国内で開発・運用する「ソブリン(主権)AI」の需要が拡大しており、その実現には国産のAIサーバーが不可欠とされています。現在、日本でAIサーバー生産に携わる企業は富士通やNECなどに限られており、ソフトバンクの参入により国内生産体制の強化が期待されます。
ソフトバンクが開発を目指すのは、最先端の画像処理半導体(GPU)を高速で動かせる高性能サーバーです。エヌビディアは自社GPUを搭載したサーバーなどを認証するプログラムを手掛けており、鴻海はAIサーバーの受託製造で世界屈指の規模を持っています。AIサーバーには従来品の数倍の電子部品が使用されるため、ソフトバンクは半導体以外の部品について、外部企業のノウハウも活用しながら自前で設計や開発を進める計画です。
生産体制の整備も並行して進められます。同社は2020年代末までに外部調達した部品の組み立てから開始し、将来はサーバーの最終工程まで一貫して手掛ける体制を目指しています。生産拠点としては、2025年に取得したシャープの堺工場(堺市)の跡地が検討されています。ソフトバンクは同工場の約45万平方メートルの土地と延べ床面積約84万平方メートルの建物などを約1,000億円で取得し、大規模なAIデータセンターの構築を進めています。
自社データセンターとAI-RANへの転用を計画
生産したサーバーは自社のデータセンターのほか、携帯通信用の基地局とAI基盤を統合する「AI-RAN(ラン)」にも転用される予定です。AI-RANは通信とAIの処理を同時にこなすインフラで、ソフトバンクは2026年度から国内で整備を開始する計画です。同社は富士通とのパートナーシップを強化し、2026年以降のAI-RAN実用化を目指しています。
AIサーバーの世界市場は急速に拡大しており、2030年には5,240億ドル(約82兆円)と2025年比で約2倍に成長する見通しです。しかし、米デル・テクノロジーズや中国の浪潮集団など大手5社が受託生産市場の過半を押さえ、日本勢の存在感は薄い状況が続いています。AIサーバーはサプライチェーン(供給網)の裾野が広く「バックドア(裏口)」と呼ばれる遠隔操作機能が仕込まれる懸念があるため、行政や金融などの分野でAIの活用が広がる中、データ流出の恐れを軽減するための国内生産への注目が高まっています。

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