アルツハイマー病マウスの脳を「若返り」させ認知機能改善に成功 理研が新技術「iPaD」を発表

超高齢社会に突入した日本において、認知症の克服は医学的・社会的に最優先事項の一つです。2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症になると予測される中、理化学研究所(理研)脳神経科学研究センターの影山龍一郎チームディレクター率いる共同研究チームは、アルツハイマー病を発症したマウスの脳を「若返らせる」ことで、認知機能を劇的に改善させることに成功したと発表しました。これまでの治療薬は主に「進行を遅らせる」ことに主眼が置かれてきましたが、今回の成果は、失われた機能を根本的に「回復」させる可能性を提示しています。
研究の鍵となったのは、脳内で新しい神経細胞(ニューロン)を生み出す能力を持つ「神経幹細胞」の再活性化です。成人の脳、特に加齢が進んだ状態では、これらの細胞の多くは「休眠状態」に陥り、再生能力が失われます。チームは、胎児期の脳で活発に働き神経幹細胞の増殖を促す遺伝子「Plagl2」と、逆に老化細胞で働きを強めて活性化を阻害する「Dyrk1a」という二つの遺伝子に着目しました。これらを制御する人工遺伝子技術「iPaD」を開発し、老化したマウスの脳内に導入したところ、19カ月齢(人間で約60歳相当)の脳が1カ月齢(同10代相当)のレベルまで若返り、新たな神経細胞が活発に産生されるようになりました。
アルツハイマー病モデルマウスを用いた行動実験では、この人工遺伝子を投与したマウスは、投与しなかったマウスに比べて迷路のゴールに達するまでの時間や移動距離が有意に短縮され、認知機能や短期記憶が回復していることが実証されました。さらに、投与から12週間後には、脳内の原因物質「アミロイドβ」の蓄積量が約半分にまで減少していたといいます。研究メンバーの福井雅弘氏は、神経新生の活性化が原因物質の減少にも直結したことに驚きと手応えを示しています。これは脳が若返ることで、本来持っている自浄作用が強化された画期的な結果といえます。
5年後の実用化を目指す 専門家からも驚きと期待の声
理研の影山龍一郎チームディレクターは、今回の発見を核酸医薬や遺伝子治療としての開発につなげ、「5年後をめどに実際の患者への投与を開始したい」という具体的な目標を掲げています。国内の専門家からは、ヒトへの応用への期待とともに、認知機能が実際に改善した点への驚きの声が上がっています。
ネット上では、「一日も早い実用化を望む」「家族が介護で苦しんでいるので希望の光だ」といった期待の声が多く寄せられています。一方で、ヒトの脳において安全に同様の再生を誘導できるか、長期的な安全性はどうかといった課題も指摘されています。既存の新薬は進行を3年程度遅らせるといった成果が注目されてきましたが、脳そのものを「再生・若返り」させるこの新しいアプローチは、アルツハイマー病治療のパラダイムを根本から変える可能性を秘めています。不治の病とされてきた認知症に対し、科学の力が大きな一歩を刻みました。

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