
小惑星リュウグウの試料に、環が100個を超える巨大な有機分子が多数含まれていると、東京大学などの共同研究チームが明らかにしました。同研究チームが原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察したところ、炭素原子が環状につながった分子が22種類確認され、その構造が初めて直接可視化されました。
宇宙には生命の材料になり得る複雑な分子が広く存在する可能性を示唆する成果で、論文が科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されています。
研究チームは、原子レベルまで観察可能なAFMを地球外試料に初めて適用し、リュウグウの試料を詳細に分析しました。発見された有機物のうち最大のものは分子量が3000以上と推定され、従来の質量分析で主に検出されていた分子量200〜500程度の分子とは大きく異なります。
さらに詳細な構造解析では、5員環や7員環、8員環といった多様な環構造を含み、平面ではなく立体的に歪んだ複雑な3次元構造を持つことも判明。なお今回の手法では分子量3000程度が観察の限界とされており、さらに巨大な分子がリュウグウに存在する可能性も残されています。
生命の起源に関する研究において、宇宙から飛来した物質が重要な役割を果たしたとする説が注目されています。リュウグウを含む小惑星の試料からはこれまでにアミノ酸や糖、DNAを構成する塩基などが発見されており、分子量は100前後から数百のものが主でした。
東京大学の杉本宜昭教授は「今回見つかった分子が直接的に生命の材料になるとは考えにくいものの、触媒のように他の物質を作る助けとなる可能性もある」と指摘しています。
単一分子観察で解明された宇宙の化学進化
本研究では、マイナス約268度の極低温かつ超高真空の環境下で、リュウグウ試料から抽出した有機分子を銅の単結晶基板上に蒸着させて観察が行われました。探針の先端に一酸化炭素分子を付着させる手法により、分子内の原子間の結合まで可視化することに成功。化学的な抽出や従来の質量分析では困難だった、極めて巨大な分子や不溶性有機物の詳細な構造を特定できるようになりました。
今回の成果は、太陽系形成以前の星間分子雲から小惑星へと受け継がれた有機分子の進化過程を解明するための重要な手がかりとなります。今後はAFMを用いて他の地球外試料にも応用していくことで、宇宙における有機分子の化学進化の過程や、地球生命の起源へとつながる物質進化の全容解明に向けた研究が飛躍的に進展すると期待されています。
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