
日本人の約4割が花粉症に悩まされる時代になり、症状を抑える薬だけでなく、体質そのものに働きかける治療やワクチン開発まで、選択肢が広がっています。関係学会が約2万人を対象に実施した全国疫学調査によると、花粉症の有病率は1998年の19.6%から2019年には42.5%へと増加。スギ花粉症だけを見ても、2019年の有病率は全国で約38.8%に達し、10代から50代ではおよそ45%以上が発症しています。
背景には、戦後に建材確保を目的として大量に植えられたスギが成木となり花粉飛散量が増えたことや、舗装道路の増加で花粉が地面に吸収されにくくなったことなど、環境要因の変化があるとされています。
花粉症は、体内に入った花粉を異物とみなした免疫が「IgE抗体」と呼ばれるたんぱく質を産生し、これが鼻や目の粘膜細胞と結合した状態で再び花粉が侵入すると、ヒスタミンなどの化学物質が放出されて症状が引き起こされる仕組みです。IgE抗体の産生しやすさには個人差があり、遺伝的な体質に加え、生活環境やアレルゲンへの曝露状況が関わっているとされています。
治療の第一選択となるのが薬物療法です。抗ヒスタミン薬などの内服薬や点鼻・点眼薬を用いて、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状を一時的に抑えます。即効性がある反面、薬の効果が切れれば症状がぶり返すことや、眠気などの副作用に悩まされるケースもあり、医師との相談が欠かせません。
鼻づまりが強い場合には、鼻の粘膜をレーザーで焼灼する手術も保険診療で行われています。難治性の重症例に対しては、IgEを標的とする生物学的製剤(注射薬)が選択肢となる場合もあり、症状コントロールの大幅な改善が報告されています。
舌下免疫療法と花粉症ワクチン、進む「根本治療」への挑戦
従来の薬では十分に症状を抑えられない患者や、長期的な改善を望む人に注目されているのが「舌下免疫療法」です。スギやダニなど原因アレルゲンのエキスの錠剤を毎日舌の下に置いて吸収させ、体を少しずつアレルゲンに慣らして過剰な免疫反応を抑える治療法です。
複数の医療機関の報告によると、舌下免疫療法により約8割の患者が症状の改善を実感。一方で効果の発現に数か月以上かかること、3〜5年という長期継続が推奨されること、毎日の自己管理が必要な点がハードルとなっています。
こうしたなか、大阪大学発のバイオベンチャー・ファンペップは、塩野義製薬と独占的開発・商業化権のオプション契約を結び、「抗体誘導ペプチドFPP004X」の開発を進めています。IgEに対する抗体産生を促すことでアレルギー反応を抑制し、その状態を維持するワクチン候補で、2025年に第1相臨床試験が開始されました。
現時点では有効性や長期的な安全性の検証途上ですが、花粉飛散前に数回投与するだけでシーズンを通じて症状を抑えられる可能性があり、対症療法から体質改善、ワクチン型治療へと広がる選択肢は、患者にとって大きな希望といえます。












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