
米国のベッセント財務長官が11日から13日の日程で来日し、高市早苗首相や片山さつき財務相、植田和男日銀総裁らと会談する方向です。トランプ大統領が14~15日に予定する中国訪問と米中首脳会談を前に、日本側との認識擦り合わせを図る狙いがあるとみられます。ベッセント氏の訪日は2025年10月以来で、日本訪問は50回超に及ぶ「知日派」としても知られています。
今回の会談では、急速な円安進行を背景とした外国為替市場の動向が主要議題の一つとなる見通しです。日本政府と日銀は4月30日、約2年ぶりとなる円買い・ドル売りの為替介入を実施し、1ドル=160円台後半まで下落していた円相場を一時155円台まで押し戻しました。変動幅は約5円に達し、2024年7月以来の大規模な円安局面に歯止めをかける形となりました。市場では大型連休期間中にも追加介入があったとの見方も出ており、当局の対応姿勢を巡る国際的な説明責任が問われています。
日米両国は2025年の財務相会談で、為替介入は投機的な動きによる「無秩序な変動」への対応として容認しうるとの立場を共有しており、日本側は今回の行動がこうした枠組みに沿うものであることを改めて確認したい考えです。為替を巡っては、米国が過度な円安けん制を求める一方、日本としては急激な変動の抑制という立場を強調する構図が続いており、ベッセント氏との対面協議は市場にも大きなメッセージとなりそうです。
さらに、レアアース(希土類)をはじめとする重要鉱物の供給網強化も、日米の共通課題として議論される見通しです。中国による輸出規制や地政学的リスクが高まるなかで、日本政府は米国と連携しながら、中国依存度を下げたサプライチェーン構築を急いでいます。ベッセント氏は米中間の経済・貿易交渉に深く関与しており、今回の訪日は、北京での米中首脳会談や中国の何立峰副首相との協議を前に、日米間で課題認識を共有する場とも位置づけられています。
金融AI「Claude Mythos」めぐる日本の対応も焦点に
今回の訪日では、新型の人工知能(AI)が金融システムに与える影響についても意見交換が行われる可能性があります。米新興企業Anthropicが開発した最新AI「Claude Mythos(クロード・ミュトス)」は、金融インフラの未知の脆弱性を短時間で大量に検出できる能力を持つとされ、サイバー攻撃への悪用を懸念する声が強まっています。
日本政府は4月24日、片山金融担当相や日銀幹部、3メガバンクのトップらが参加する緊急会合を金融庁で開催し、ミュトスを含む高度なAIが金融システムにもたらすリスクと対策を協議しました。 同AIは攻撃者の手に渡った場合、主要なオペレーティングシステムや金融ネットワークに対し、未修正の深刻な脆弱性を数秒から数分で数千件規模で特定・悪用しうるとされ、官民一体での防御体制強化が急務となっています。
一方で、この高性能AIを防御側として活用できれば、サイバーセキュリティの飛躍的な向上にもつながると期待されますが、米政府はリスクの大きさを踏まえ、提供先を一部の組織に限定するなど国外への展開に慎重な姿勢を示しています。 現状、日本の企業や政府機関はミュトスへの直接アクセスが制限されており、日米間の情報共有や利用条件の在り方も、ベッセント氏の訪日協議の中で議題に上る可能性があります。
為替介入、重要鉱物の供給網、そして金融システムを巡るAIリスクと、その活用ルールの構築など、多岐にわたる議題を抱える今回の日米協議は、経済安全保障とデジタル時代の金融安定をどう両立させるのかという、日本にとって中長期の政策方向を占う試金石となりそうです。




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