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- 自宅のぬいぐるみの中にAirTagが…。 “見えないストーカー”の脅威を刑法の専門家が警鐘
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「便利な紛失防止グッズ」が、思わぬかたちで犯罪に使われています。小型の追跡デバイスとして普及が進む「Apple AirTag」ですが、その手軽さゆえにストーカー行為への悪用が問題視されています。鍵や財布を見つけるためのツールが、なぜ“人を追跡する道具”になってしまうのでしょうか。
テクノロジーは、ストーカー犯罪をどのように変えたのか。そして私たちは、それを防ぐことができるのか。刑法が専門で、ストーカー事件にも詳しい東京都立大学・法学部の星 周一郎教授への取材と実際の事件、そしてデータから、その実態を読み解きます。
<目次>
ぬいぐるみの中に仕込まれたタグ
「Apple AirTag」を使った事件はすでに発生しています。
2025年12月、水戸市 のアパートで、ネイリストの女性(31)が殺害された事件では、元交際相手の男が被害者の車に紛失防止タグを取り付けていた疑いが浮上しました。
捜査関係者によると、男は事件直前、車へのタグ設置に加え、自宅周辺をうろつくなどの行為もしていたとされています。さらに、被害者の自宅からはぬいぐるみの中に隠された同様の機器も見つかりました。
日常の中にある何気ない持ち物の中に、知らないうちに追跡装置が紛れ込んでいる——。この事件が示しているのは、暴力が振るわれる以前から監視が進行していた可能性です。
なぜAirTagがストーカー行為に使われるのでしょうか。星氏はその“手軽さ”が理由だと指摘します。

「AirTagはサイズも非常に小さく、コインのような感覚で扱えます。さらにバッテリーが長持ちします。半年から1年単位で持つので、継続的に相手を追跡することができてしまいます」
従来のGPS機器は電池消費が大きく、継続利用には手間がかかりました。 そのため、長期間にわたる追跡には一定のハードルがあったのです。しかし、AirTagは小さく、安く、そして長時間使えます。
「GPSは衛星と通信して位置を特定しますが、AirTagはBluetoothで周囲のスマートフォンと接続し、その位置情報を使います。知らないうちに他人のスマホが“協力している”状態になります」
つまりAirTagは自分で位置を測っているわけではありません。周囲にあるスマートフォンを“中継点”として利用しているのです。この仕組みによって、消費電力を抑えつつ広範囲での追跡が可能になっています。
こうした条件がそろったことで、これまで専門的だった「追跡」という行為が、誰でも実行できるものへと変わりつつあります。そして、“見えない追跡”は、すでに例外ではありません。データにもその傾向が表れています。
“見えないストーカー”の相談件数は過去最多に

紛失防止タグやGPS機器を用いて位置情報を無断で取得するストーカー行為について、茨城県警に寄せられた2025年の相談件数は34件と、統計を取り始めた2021年以降で最多となりました。一見すると多くないようにも見えますが、AirTagを使った追跡は着実に広がりつつあります。
国も対策を進めています。2025年12月にはストーカー規制法が改正され、タグの無断取り付けや位置情報の取得が明確に規制対象に加えられました。もし違反した場合、警告や禁止命令の対象となり、場合によっては逮捕に至ることもあります。
では、こうした悪用を防ぐことができるのでしょうか。結論から言えば、完全に防ぐことは難しいのが現状です。その大きな理由として、被害に気づきにくい構造が挙げられます。
「そもそも“追跡されているかもしれない”と考えない限り、防ぐのは難しいでしょう。もちろん自分のものではないAirTagが近くにあると通知する機能などの対策はあります。ただ、それも設定していなければ意味がありません」
さらに、デバイスの小型化も発見を困難にしています。カバンや小物の中に紛れていた場合、気づくのは簡単ではありません。技術が進歩するほど、“見えないリスク”は増していきます。ここに、テクノロジー型犯罪の難しさがあります。
ストーカーは「手段を変える」

「実は、技術だけの問題ではありません」と星氏は強調します。
「ストーカーは、どうすれば相手を追跡できるかを常に考えています。規制されれば別の方法を探します。過去には手紙などを使い、心理的に圧力をかけるケースもありました。AirTagはその一例に過ぎません。本質は“監視したい”という意識です」
技術の進歩を止めることはできません。便利さとリスクは常に隣り合わせです。だからこそ重要なのは、技術そのものを否定することではなく、どう使われるか、どう規制するかという視点です。そのため、社会の認識が問われています。
「AirTagは若い世代にとっては身近なデバイスです。“これが犯罪になる”という認識がないケースもあるでしょう」
誹謗中傷や闇バイトと同様に、 “知られていないこと”そのものがリスクになります。新しい技術が登場するたびに、社会は「どこまで許されるのか」を更新し続けなければなりません。
AirTagのようなデバイスは、今後さらに普及していきます。その利便性の裏で、見えないかたちで人を追跡できる時代がすでに始まっています。現実には、ぬいぐるみの中にまで仕込まれる形で、監視は日常の中に入り込んでいます。
テクノロジーは止められません。だからこそ問われるのは、「そのリスクをどこまで理解し、社会で共有できるか」なのではないでしょうか。


















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