
中東情勢の緊迫化に伴うホルムズ海峡の実質封鎖により、世界のエネルギー供給網に大きな変化が起きています。これまで原油の9割超を中東に依存してきた日本をはじめとするアジア各国は、深刻な影響を受けています。
中東からの輸入が減少する中、アジア各国は代替として米国産原油の調達を急ピッチで進めています。これに伴い、中米のパナマ運河を通航する原油および石油製品のタンカーが急増しています。欧州の調査会社ケプラーのデータによりますと、今年4月に同運河を通過した原油や石油製品の量は日量177万バレルに達しました。これはデータのある2013年以降で最高の記録であり、2025年の平均である同102万バレルから74%もの大幅増となっています。なかでも日本向けの輸送量は同26万バレルに上り、25年比で5倍超にまで膨れ上がっています。
通常、アジア向けの原油輸送には載荷重量が約30万トンの超大型タンカー(VLCC)が多く使われますが、この巨大な船はパナマ運河を通航することができません。そのため、米国からアジアへの原油輸送は、輸送日数が延びるものの運賃が割安に抑えられるアフリカ南端の喜望峰を経由するルートが主流でした。
しかし、一刻も早い代替調達を迫られた日本や中国などは、パナマ運河を通れる中小型タンカーへ輸送手段を切り替えています。実際に、日本の大手元売りであるコスモエネルギーホールディングスが購入し、4月下旬に到着した米国産原油もパナマ運河経由で運ばれました。輸出に回せる量が多く価格もわかりやすい米国産は、各国の需要が集中していますが、米国の輸出制限などの政策変更リスクに加え、パナマ運河の通航という物理的な障壁が新たな調達の不確実性として浮上しています。
予約枠のオークション価格高騰と輸送コスト増の懸念
パナマ運河は昇降式のため1日の通航隻数に上限があります。平時でもコンテナ船や液化石油ガス(LPG)船などで混雑する中、原油タンカーが殺到し運河はパンク状態です。コンテナ船などは事前に予約枠を押さえていますが、急きょ手配されたエネルギー輸送船は、直前に予約可能な枠をオークションで確保しなければ通航できません。
パナマ運河庁によりますと、オークション相場は高騰しています。中東情勢の悪化前は13万5000〜14万ドルだった平均落札価格が、3月から4月にかけ約38万5000ドルに上昇しました。海運サービス会社のウオーターフロントマリタイムサービシズは「100万ドルを超える入札が顕著に増加している」と指摘しています。
飯野海運の妹尾邦彦執行役員が「いつ枠が取れるかわからない」と語るように、見通しが立たず、確実な輸送を優先して喜望峰ルートを選ぶケースも出ています。高値での応札や遠回りによる運賃上昇は、最終的に石油製品やガスの価格に輸送費として上乗せされるため、国内経済への悪影響が強く懸念されています。
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