
サムスン電子の時価総額が1兆ドル(約157兆円)の大台を突破しました。この記録は、アジアの企業としては台湾の半導体受託製造大手であるTSMCに続いて史上2社目となる歴史的な快挙です。
この圧倒的な株価の急騰により、同社を所有する一族の4人が韓国の富豪ランキングのトップを独占する事態となりました。国内の長者番付トップ4を同一の家族が独占するのは同国の歴史上初めてのことです。フォーブスのリストによれば、サムスン電子の会長を務めるイ・ジェヨン氏の推定純資産は現在340億ドル(約5.34兆円)に達し、ランキングのトップに立っています。
また、妹でありソウル屈指の高級ホテルグループであるホテル新羅のプレジデント兼CEOを務めるイ・ブジン氏が約1.95兆円で第2位に、サムスングループの実質的な持株会社であるサムスン物産の戦略企画担当プレジデントを務めるイ・ソヒョン氏が約1.88兆円で第3位へと浮上しました。さらに、2017年に退任するまで「リウム」の愛称で知られるサムスン美術館およびホアム美術館の館長を務めていた母のホン・ラヒ氏も、約1.76兆円の資産で第4位となっています。
彼らの莫大な資産の大部分は、世界最大のメモリーメーカーであるサムスン電子の株式に由来しています。同社の株価は、人工知能(AI)インフラに不可欠な先端メモリーの需要急増に後押しされ、過去1カ月で40%、この1年間で5倍に跳ね上がりました。特に、エヌビディアやAMDなどのAIチップ向けに採用されている高帯域幅メモリー(HBM)や、AIに不可欠な膨大なデータセットを保存するデータセンター向けのNAND型フラッシュメモリーへの堅調な需要が業績を力強く牽引しています。
最新の業績報告によると、同社の2026年第1四半期の売上高は前年同期比69%増の133兆9000億ウォン(約14.73兆円)に達しました。さらに営業利益は驚異の756%増となる57兆2000億ウォン(約6.29兆円)を記録し、四半期ベースで過去最高を更新しています。バークレイズなどのアナリストは、AI向けのメモリー需要と供給の不均衡は近いうちに改善する兆しは見られず、2027年にかけてデータセンターでのメモリーの重要性が増すことを考慮すると、同社の構造的成長は今後も継続する見通しであると分析しています。
創業者から受け継がれる巨大帝国と一族の責任
現在の圧倒的な繁栄を築き上げた基盤は、イ・ジェヨン氏の祖父にあたるイ・ビョンチョル氏が1938年に商社である「三星商会」として創業したことに遡ります。その後、同社は食品や繊維、そしてエレクトロニクスなどの幅広い分野へと事業を拡大し、世界的な巨大帝国を作り上げました。
その後を継いだ父のイ・ゴンヒ氏は、2020年に78歳で他界しました。その際、遺された一族は韓国史上最大級となる莫大な相続税を支払う義務を負うこととなりました。この巨額の税負担は、一族の資産基盤を揺るがしかねない規模でしたが、彼らは保有する株式の配当金や金融機関からの融資を活用し、約12兆ウォン(約1兆2700億円)の相続税を5年かけて2026年5月に完納するという義務を果たしています。
サムスンが単なる一企業を超え、国家経済を牽引する存在となった現在、莫大な富を独占する一族にはノブレス・オブリージュ(高貴な者の義務)が求められています。遺族は納税義務を果たすだけでなく、医療分野への1兆ウォンの寄付や、約2万3000点に及ぶ国宝級の文化財・美術品の寄贈など、社会貢献活動にも尽力しています。AI時代の中核を担い、時価総額1兆ドルを超える企業価値を手にしたことで、一族の社会的責任と今後の経営手腕には、世界中からさらなる注目が集まっています。





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