
起業家イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースXが、早ければ6月12日に米ナスダック市場へ新規株式公開(IPO)に踏み切ることが明らかになりました。時価総額約1兆7500億ドル規模と史上最大の大型案件となり、約750億ドルの資金調達を目指します 。
上場において最大の焦点となっているのが、マスク氏に圧倒的な権力を残す異例のガバナンス構造です。証券当局へ提出された資料によると、一般投資家向けの「クラスA」株に加え、マスク氏ら内部関係者のみが保有できる「スーパー議決権」付きの「クラスB」株を発行します。クラスB株はクラスA株の10倍の議決権を有します 。さらに、最高経営責任者(CEO)の解任は通常の取締役会手続きではなく、このクラスB株の投票によってのみ決定される仕組みとなり、過半数を握るマスク氏の解任は事実上不可能となります 。
この強固な支配体制の背景には、電気自動車(EV)大手テスラでの巨額報酬パッケージが、デラウェア州の裁判所でごく少額の株式を持つ株主の訴えにより一時否決された苦い教訓があります。これに猛反発した同氏は、スペースXの法人登記を株主訴訟のハードルが高い米南部テキサス州へ移転しました。同州の法律では訴訟提起の権利が発行済株式の3%以上を保有する株主に限られており、少額投資家による訴訟リスクを徹底的に排除しています。
事業面でも攻勢を強めており、テキサス州では人工知能(AI)向け半導体の巨大工場「テラファブ」の建設計画も進行しています。初期投資額は550億ドル(約8兆円)に上るとされ、同社が買収したxAIなどと連携し、宇宙開発にとどまらないAI・半導体インフラの垂直統合を目指しています 。
「完全支配」に対する機関投資家の懸念と市場への影響
創業者への極端な権限集中に対し、市場からは強い警戒の声が上がっています。ニューヨーク州やニューヨーク市の会計監査官、およびカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など米国の主要な公的年金基金は、この所有・支配体制に重大な懸念を示す書簡をマスク氏へ送付しました。テスラやxAIなど複数企業のトップを兼任する同氏による利益相反のリスクや、株主の提訴権が実質的に封じられている点が問題視されています 。
しかし、スペースXの上場は、その規模の大きさから株式市場全体に不可避な影響を与えます。上場当初から1兆ドルを超える時価総額が見込まれるため、主要な株価指数へ早期に組み入れられる可能性が高く、多くの機関投資家はパッシブ運用を通じて自動的に同社株をポートフォリオに組み入れることになります 。結果として、投資家は積極的に選ばずとも「マスク流ガバナンス」のリスクを引き受けることを余儀なくされます。議決権や提訴権が大幅に制限された状態で、巨大な投資マネーがどのようにこの異例の企業統治と向き合っていくのか、6月のメガIPOに向けて金融市場の反応が注視されています。












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