世界初の実用化となるiPS細胞薬「アムシェプリ」、薬価約5530万円で保険適用へ

厚生労働省は5月13日、iPS細胞を用いたパーキンソン病向けの再生医療製品「アムシェプリ」について、中央社会保険医療協議会(中医協)の総会で公的医療保険の対象とすることを提示し、了承されました。薬価(公定価格)は患者1人あたり5530万6737円に決定し、20日から保険適用が始まります。実際の治療開始は今年秋ごろと見込まれています。iPS細胞由来の製品が実用化されるのは、世界で初めてのケースとなります。
住友ファーマが開発した「アムシェプリ」は、手足の震えや体のこわばりなどの症状が表れるパーキンソン病の患者に対して使用されます。対象となるのは、脳内のドーパミンを補う既存の薬の効き目が十分ではない方々です。治療では、健康な他人のiPS細胞から作製した、ドーパミンを出す神経細胞のもとになる細胞を患者の脳に注入します。頭蓋骨に小さな穴を開け、体の動きを調節する脳の「被殻」と呼ばれる部位の複数箇所に細胞を移植することで、脳内でのドーパミン分泌を増やし、運動症状の改善を期待する画期的な仕組みです。
対象となる患者数はピーク時の2035年度に133人と予測されています。極めて高額な薬価が設定されましたが、患者の自己負担については、指定難病の医療費助成制度や高額療養費制度などの公的な仕組みを活用することで、実際の負担額は一定の範囲内に抑えられる見通しです。
また、本製品は安全性が認められ有効性が見込める段階で暫定的に製造・販売が認められる「条件・期限付き承認」を2026年3月に得ており、7年以内に有効性や安全性を再検証して改めて承認申請する必要があります。今回の薬価は、効果の似た薬がないため製造原価などを積み上げて計算するルールに則りつつ、暫定承認であることを考慮して予測営業利益を半分だけ乗せて算出されました。今後、本格承認を得た際には、薬価がさらに高額になる可能性も指摘されています。
外傷性脳損傷向け「アクーゴ」の保険適用とiPS細胞研究の最前線
同日の厚生労働省の中医協総会では、サンバイオが開発した外傷性脳損傷向けの再生医療製品「アクーゴ」についても、患者1人あたり7271万6528円の薬価とし、20日から公的医療保険の対象とすることが了承されました。交通事故や転倒などで傷ついた脳の神経細胞を修復し、運動まひの改善を促す製品であり、これまでリハビリ以外に有効な治療法がなかった中、脳組織の再生を期待できる世界初の製品として注目を集めています。
再生医療の分野ではさらなる研究開発が続いており、京都大学は動物実験を通じて、iPS細胞を駆使した治療が固形がんに対しても有効であることを確認しています。今後も継続的な研究資金を確保するため、京都大学は保有するiPS細胞の基本特許について、存続期間を5年延長する申請を行う方針です。日本発の最先端技術が、今後も世界中の難病治療に貢献することが期待されています。
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