
半導体受託生産の世界最大手である台湾積体電路製造(TSMC)は5月16日までに、熊本工場(熊本県菊陽町)を運営する子会社のJASMが今年1~3月期に初めて黒字に転換したと発表しました。台湾メディアによると、同工場での量産開始以降、四半期ベースでの黒字化は今回が初めての達成となります。
JASMが公表した財務資料によれば、今期の利益は9億5138万台湾元(日本円で約47億8千万円)に上りました。熊本第1工場は2024年12月に量産を開始しており、本格的な稼働からわずか1年余りという異例の早さで収益化を実現したことになります。現在、同工場では最先端ノードではないものの需要が非常に底堅い「成熟プロセス」と呼ばれる技術を採用しており、主に画像センサーや自動車部品などに不可欠な半導体を安定的に生産しています。通常、巨大な設備投資を伴う半導体工場は初期の減価償却費が重く、黒字化には複数年を要することが一般的ですが、今回の早期黒字化は歩留まりの迅速な改善と顧客からの強い需要が背景にあるとみられます。
さらにJASMは、国内、とりわけ熊本における生産体制を一段と強化する方針を打ち出しています。現在建設が進められている第2工場では、28年に回路線幅3ナノメートル(ナノは10億分の1)相当の先端半導体の量産を開始する計画が明らかにされています。この最先端プロセスの導入は、世界的に急拡大している人工知能(AI)関連の旺盛な需要を確実に見込んだ戦略的な生産拠点としての役割を担うことになります。
国内に3ナノメートルプロセスの量産基盤が構築されることは、産業界全体が最新鋭のAIアクセラレータなどのデバイスを安定的に調達できる体制が整うことを意味しており、経済安全保障の観点からも計り知れない価値を持ちます。今回の早期黒字化は、先端半導体生産基盤の定着を証明する重要な試金石となるでしょう。
ソニーとの提携で次世代イメージセンサーの生産網を強化
こうした生産体制の強化に加えて、5月8日にはソニーグループと次世代イメージセンサーに関する戦略的提携に向けた基本合意書を交わしたことが発表されました。この提携により、熊本県合志市に新設されたソニーの工場において、新たな開発および生産ラインの構築を検討することが明らかになっています。
この新たな取り組みは、自動運転車や産業用ロボットなど、現実世界の情報を瞬時に処理する分野での市場開拓を目的としています。ソニーが持つ世界トップクラスのイメージセンサー設計技術と、JASMの最先端の半導体製造プロセス能力を高度に融合させることで、次世代の技術革新を強力に牽引する構えです。
画像データの記録から、センサー内部での自律的な情報処理へと需要が高度化する中、JASMの微細化技術を活用することは極めて合理的です。両社の強固な連携による技術覇権の確立が今後さらに注目されます。







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