
北海道新幹線の新函館北斗―札幌間の延伸工事を巡り、公正取引委員会が軌道敷設(レール敷設)工事の入札で談合が行われた疑いがあるとして、鉄道工事会社9社への立ち入り検査に踏み切りました。 独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで、延伸区間の工事を発注している独立行政法人「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(鉄道・運輸機構)の事務所も対象となっており、事業主体側の関与の有無も含めた実態解明が焦点となります。 対象となったのは、北海道軌道施設工業(札幌市)、仙建工業(仙台市)、ユニオン建設(東京都目黒区)、東鉄工業(東京都新宿区)、名工建設(名古屋市)、大鉄工業(大阪市)、広成建設(広島市)、九鉄工業(北九州市)、三軌建設(福岡市)の9社で、いずれもJR各社のグループ会社や資本関係のある企業です。 関係者によりますと、これらの企業は、北海道新幹線の札幌延伸区間におけるレール敷設工事の一般競争入札に際し、落札予定の会社を事前に調整するなど、互いの競争を制限していた疑いが持たれています。
問題となっている軌道敷設工事は、新函館北斗―札幌間を10工区程度に分けて発注しており、すでに2024~25年にかけて5工区で契約が締結されています。 これらの区間では、1社のみが応札した入札や、複数社が参加した入札の両方がありましたが、いずれの契約も落札率が94%を超え、うち2件は予定価格の99%超とされ、価格競争が働いていない可能性があると指摘されています。 各契約は複数年にわたり、1件あたりの落札額はおおむね26億~43億円規模に達したと報じられています。 公取委は、既に契約済みの5工区に加え、今後入札が行われる残る5工区についても、同様の調整があったかどうかを調査するとみられます。
北海道新幹線は、現在は新青森駅(青森市)―新函館北斗駅(北海道北斗市)間で営業しており、新函館北斗―札幌間(約212キロ)は2012年に工事実施計画の認可を受けて着工しました。 当初は2030年度末の開業を目指していましたが、難工事区間の存在や地質の問題などから工期の延伸を余儀なくされ、開業目標は2038年度末ごろに後ろ倒しされている状況です。 延伸工事の総事業費は資材価格や人件費の高騰もあり当初見通しの約2兆3000億円から膨らみ、3兆円台半ばに達する可能性があると伝えられており、国が3分の2、沿線自治体が3分の1を負担する枠組みの中で地方財政への影響も懸念されています。 その中核をなす軌道敷設工事で談合が疑われる事態となったことで、巨額の公共投資の適正性と透明性を問う声が一段と強まりそうです。
札幌延伸への影響と今後の焦点
今回の立ち入り検査では、レール敷設を担うJRグループ系企業が一斉に対象となったことで、鉄道インフラ整備における受注構造そのものへの見直しを求める議論にも発展する可能性があります。 公取委は、9社の担当者間でどのような情報交換や調整が行われていたのか、また鉄道・運輸機構の職員が入札の「すみ分け」を把握・容認していなかったかなどを重点的に調べるとみられます。 事実関係が立証されれば、独占禁止法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令が出される可能性があり、一部の工事契約については無効や入札やり直しを求める議論も出てくるかもしれません。
一方で、札幌延伸は地域の期待も大きく、すでに開業時期が約8年後ろ倒しとなる見通しの中で、工事のさらなる遅れが生じることへの懸念も避けられません。 延伸区間の建設費が3兆円台へ増大する見込みとされるなか、沿線自治体からは「負担が膨らむ以上、事業の効率化とコスト抑制が不可欠だ」といった声も上がっており、談合疑惑はこうした要請と真っ向から矛盾するものです。 鉄道・運輸機構は、札幌の事務所への立ち入り検査を受け、「調査に全面的に協力する」とコメントしており、結果次第では入札手続きの見直しや第三者によるチェック体制の強化を迫られる可能性があります。 公共性の高い大規模プロジェクトにおいて、公正な競争環境を確保しながら、開業の遅れを最小限に抑えられるのか、捜査の行方と並行して、国や事業主体、自治体の対応が問われる局面となっています。





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