企業・IT OpenAI、イーロン・マスク氏との訴訟で勝訴 陪審が時効と判断し請求棄却

米カリフォルニア州の連邦地方裁判所で5月18日、実業家のイーロン・マスク氏が、対話型人工知能(AI)「ChatGPT」を開発した米OpenAIおよび同社のサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)らを相手取って起こした訴訟において、マスク氏の請求を棄却する判断が下されました。9人の陪審員は、マスク氏の主張は出訴期限を過ぎているとして満場一致で退ける評決を下しました。担当のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ連邦地裁判事もこの判断に同意し、慈善信託違反および不当利得に関するマスク氏側の請求を正式に棄却しました。
訴訟の発端は、マスク氏が2015年に共同創業者としてOpenAIを非営利組織として設立した時代にさかのぼります。同社は当初、「人類の利益」を掲げていましたが、マスク氏はAIの危険性や会社の方向性を巡る経営陣との対立から、2018年に組織を離れました。マスク氏は2024年になり、アルトマン氏らが資金調達を優先して組織を営利企業に転換させたことは、設立時の理念に背く契約違反であるとして提訴に踏み切りました。訴状では、営利部門が得た不当利益の没収や、アルトマン氏らの解任を求めていました。
また、OpenAIへ巨額出資し深く関与してきた米マイクロソフトも、設立合意違反に加担したとして被告に名を連ねていました。今回の裁判では、双方の証人が出廷し、アルトマン氏の経営姿勢などを巡って激しい応酬が繰り広げられました。しかし、最終的な争点となったのは、組織変更の是非という実体的な問題ではなく、マスク氏が訴えを起こす時期を逸していたかどうかという手続き上の点でした。裁判所は、マスク氏が同社の営利化の動きを知っており、もっと早くに訴訟を起こすことができたと指摘し、時効が成立していると判断しました。これにより、OpenAIやマイクロソフトに対する請求はすべて退けられる結果となりました。
泥沼の法廷闘争から一転、IPOへ前進するOpenAIと反発するマスク氏
今回の全面勝訴により、OpenAIにとっては、早ければ年内にも予定されている新規株式公開(IPO)に向けた大きな法的リスクが取り除かれたことになります。市場では同社の企業価値が兆ドル規模に達するとも見込まれており、上場への道筋がはっきりと整った格好です。
一方、マスク氏は判決後、自身のSNSであるX(旧ツイッター)上で「アルトマン氏らが慈善団体を盗んで利益を得たのは事実だ」と強く批判し、「慈善団体を略奪する前例をつくってはならない」と投稿しました。マスク氏は判事や陪審員が事件の実態について判断を下していないとして、上訴する方針を明確にしています。かつてはAIを人類の利益のために開発するという同じ理想を掲げた仲間だった両者ですが、その関係は修復不可能な対立へと発展しました。マスク氏は現在、自ら設立したAI企業「xAI」を通じて、OpenAIの強力な競合として事業を進めています。法廷から市場での競争へと舞台を移しつつも、AI業界を牽引する両陣営の激しい主導権争いは今後も続くとみられます。




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