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- 強制執行は「命がけの現場」相次ぐ惨劇の背景と事件を防ぐには【弁護士が解説】

2026年1月15日、東京都杉並区のアパート前で不動産の強制執行に訪れた東京地裁の執行官と家賃保証会社の社員が包丁で刺される事件が起きました。容疑者はアパートに住んでいた男性です。
2022年10月から当該アパートに入居。月5万5000円の家賃を累計100万円近く滞納していたとされます。室内に火を放つなどした末に逮捕されており、「死んでもかまわないと思った」と供述しました。さらに3月には東京都八王子市で強制執行の予定通知を受けていた住人の男が室内を放火する事件も発生しており、強制執行の現場は緊張感が続いています。
本記事では相次ぐ強制執行の現場における惨劇について、事件が起きる背景や対策について弁護士に取材しました。
<目次>
そもそも「強制執行」とは何か

まずは強制執行の制度と実施される理由について解説します。
強制執行とは、確定判決や裁判上の和解など、法的な債務名義に基づき、義務を果たさない者に対して国が強制的に権利を実現する手続きです。不動産の「明渡し」に限らず、預金口座や給与の差し押さえなども強制執行に含まれます。差し押さえは強制執行の前段階に位置し、債務者の財産を凍結してその移動や処分を禁じる手続きです。
では、事件が相次いでいる賃貸物件における強制執行は、なぜ行われているのでしょうか。主なケースは家賃の未払いです。一般的に、家賃滞納が3~6カ月以上に及ぶと、信頼関係の破綻があったとして賃貸借契約の解除が認められやすくなります。その間、貸主側は督促状の送付や電話連絡など様々な措置を講じ、それでも解決しなければ、明渡し訴訟を経て強制執行へと至る流れです。
賃貸物件の場合、入居者に対して事前に「催告」と呼ばれる最終通告が行われます。指定期日までに退去がなければ業者(執行補助者)とともに室内の家財を搬出し、鍵を交換する「断行」が実施されます。
不動産の強制執行では執行官だけでは作業が難しいため、鍵の専門業者・搬出業者・貸主側の弁護士や管理会社・保証会社など、複数の関係者が立ち会うことが一般的です。
なぜ不動産の強制執行は「危険」なのか

――相次ぐ不動産の強制執行における事件をどう受け止めていますか。
痛ましく、そして構造的な背景を考えると一定のリスクも想定できた事案であったという印象も受けます。 強制執行の現場というのは、債務者にとって『最後の砦』が崩れる瞬間です。経済的に追い詰められ、精神的な余裕もない状態で、見知らぬ人間が自分の部屋に踏み込んでくる。だからといって暴力が許されるわけでは絶対にありませんが、このような事件は完全に防ぐことは容易ではなく『起きるべくして起きた』という側面を否定できません。
残念ながら強制執行の件数は、今後も増える可能性はあります。
単身世帯の増加、高齢者の孤立などの社会的背景が重なれば、家賃滞納から強制執行に至るケースは十分に予想されます。頼れる家族のいない独居高齢者が滞納に陥り、気づいたときには手続きが進み過ぎていた、というケースも増えるおそれがあります。
――では、どうすれば防げるのでしょうか。
「強制執行の現場で痛ましい事件が起きないようにするためには、債務者と債権者の両側からのアプローチが必要です。
まず債務者側には強制執行は突然行われるものではなく、必ず事前に催告という通知がされます。ところが、経済的・精神的に追い詰められた方はその通知を受け取っても動けない。そのうちに強制執行が始まってしまうので、殺人や放火といった強硬策に出る事件が起きていると考えられます。
こうした方々に対し、生活保護の申請支援や、法テラス・弁護士会による法律相談など、セーフティネットへの橋渡しをもっと積極的に行う必要があります。「一人ではない」としっていただき悩みを抱え込まないよう、社会全体で『相談窓口がある』と周知することが急務です。
一方、裁判所や債権者側も、追いつめられている債務者の状況に目を向けることが、最終的に事件を防ぐことにつながるでしょう。たとえば、自治体の福祉部門との連携などを行い、穏便に退去できるような方法が構築できれば、強制執行時の事件を防ぐことにつながるでしょう。相次ぐ悲劇を機に、執行の進め方の見直しを真剣に議論すべきだと思います。
強制執行は最終手段です。そこに至ってしまった時点で、多くの人が傷ついています。貸主も、保証会社も、そして何より追い出される側も。孤立した人が追い詰められていく過程のなかで、もっと早くに家賃滞納をきっかけに福祉につながる仕組みも構築できるとよいのかもしれません。

福島敏夫(ふくしま・としお)弁護士
大阪弁護士会所属。公房法律事務所代表。竹中工務店勤務を経て弁護士に転身。一級建築士・建築施工管理技士の資格を持ち、建築・不動産分野のトラブルを専門に年間100件以上の相談を手がける。








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