サントリーHD元会長・新浪剛史氏、違法サプリ密輸疑いで不起訴処分 福岡地検が捜査証拠を慎重検討

大麻由来の違法成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」が含まれるサプリメントを米国から密輸したとして、麻薬取締法違反(輸入)の疑いで書類送検されていたサントリーホールディングス(HD)元会長の新浪剛史氏(67)について、福岡地方検察庁は2026年5月22日、不起訴処分とすることを決定しました。
福岡地検は処分の理由について、「今回の捜査によって得られた関係証拠を慎重に検討した結果、不起訴処分とした」とコメントしています。不起訴の具体的な理由(起訴猶予・嫌疑不十分・嫌疑なし)のいずれに当たるかについては、「差し控える」として明らかにしませんでした。
この事件の発端は2025年7月下旬にさかのぼります。福岡県警の捜査によると、新浪氏はアメリカ在住の知人女性(59)と、その弟(54・福岡県在住)と共謀して、基準値を超える大麻成分THCを含む違法サプリを米国から密輸したとされていました。問題のサプリは空港の税関検査で発見され、荷物の受取先だった弟が麻薬取締法違反の容疑で逮捕されました。弟は「新浪氏に転送するよう頼まれた」と供述しており、これを受け、福岡県警は2025年8月、東京都内にある新浪氏の自宅を家宅捜索しました。
しかし、捜索の結果、自宅から違法性のある薬物は見つからず、新浪氏の尿検査でも薬物反応は確認されませんでした。新浪氏は一貫して容疑を否定し、「日本国内で所持も使用もしておらず、輸入も指示していない」と主張していました。
その後、福岡県警は2026年4月16日、麻薬取締法違反の疑いで新浪氏と知人女性を書類送検。県警は、刑事処分の判断を検察に委ねる「相当処分」の意見を付けていました。今回の不起訴処分は、この書類送検から約1か月後の決断となります。
新浪氏は家宅捜索後の2025年9月に記者会見を開き、サプリについて「輸入するよう指示したものではない」と改めて否定しました。その後、サントリーHDの会長職と、経済界の重要な役割を担っていた経済同友会の代表幹事を辞任しています。今回の不起訴処分により、刑事手続きとしての事件は一区切りを迎えましたが、辞任した役職が戻ることはなく、新浪氏の社会的影響は大きなものとなりました。
なお、福岡地検は同日、知人女性とその弟についても同様に不起訴処分としており、関係する3名全員が起訴を免れる結果となりました。
不起訴の意味と「THC」規制をめぐる背景
今回の不起訴処分において注目されるのは、地検が具体的な理由を明かさなかった点です。一般に検察が不起訴とする主な理由には、①証拠が不十分な「嫌疑不十分」、②犯罪の事実がない「嫌疑なし」、③悪質性などを考慮して起訴を見送る「起訴猶予」の3種類があります。今回は自宅捜索でも薬物が見つからず、尿検査も陰性だったことから、証拠の観点で起訴に踏み切れなかった可能性が高いとも見られています。
本件で問題となった大麻由来成分「THC(テトラヒドロカンナビノール)」は、日本では麻薬取締法によって一定濃度以上の含有が厳しく規制されています。近年、海外では健康サプリとして流通する大麻由来製品が日本に持ち込まれるケースが増加しており、税関当局による取り締まりが強化されています。今回の事件は、日本国内の大麻成分規制と個人のサプリ使用をめぐる法的グレーゾーンが改めて浮き彫りになった事例ともいえます。
新浪氏はサントリーを飲料業界のグローバル企業に押し上げた経営者として知られ、経済同友会代表幹事として経済政策でも存在感を示してきた人物です。今後、社会的な名誉回復や経済界への復帰に向けた動きが注目されます。












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