
改正民事訴訟法が2026年5月21日に全面施行され、民事裁判の手続きが一斉にデジタル化されました。 訴状の提出から証拠書類の提出、訴訟記録の閲覧、判決文の受領にいたるまで、自宅や事務所のインターネット環境さえあれば一度も裁判所に足を運ばずに手続きを完結できる仕組みが整いました。
この改正民事訴訟法は2022年5月に成立し、2023年3月から段階的に施行されてきました。 2023年には弁論準備手続へのウェブ会議参加が認められ、2024年3月からは口頭弁論の期日においても当事者の一方または双方がウェブ会議を通じて参加できるようになっていました。 今回の全面施行はその集大成にあたるものです。
新制度を利用するには、最高裁判所が開発・運用する民事裁判書類電子提出システム「mints(ミンツ)」へのアカウント登録が必要です。 mintsはこれまで任意で利用できるシステムでしたが、2026年5月21日以降は訴訟代理人である弁護士・司法書士等にとって原則としてmints経由でのオンライン申立てが義務付けられており、紙による提出は方式違反として不適法却下となる可能性もあります。 一方、弁護士などの代理人を立てずに自ら裁判を進める「本人訴訟」においては、引き続き書面での手続きも認められています。
手数料の面でも大きな変化があります。これまでは訴状に収入印紙を貼り付け、別途郵便切手を予納するという手順が必要でしたが、改正後は申立て等の手数料に郵便費用が一本化され、ペイジー(Pay-easy)による電子納付に一本化されました。 さらに、オンライン申立てと書面申立てでは手数料の金額も異なり、オンラインのほうが低額に設定されています。たとえば被告1名の訴え提起の場合、書面申立てでは2,500円のところ、オンライン申立ては1,400円となっています。
これまで紙ベースで管理されてきた訴訟記録は、今後は裁判所がデータで保管します。 当事者や訴訟代理人は裁判所に出向かなくてもmintsを通じて訴訟記録を閲覧できるほか、第三者についても、最寄りの裁判所に出向けば他の裁判所で行われた訴訟記録を閲覧することが可能となりました。
今回の施行対象は、2026年5月21日以降に新たに提起された民事訴訟です。 全面施行前から係属している事件については、引き続き書面による審理や送達が行われます。 また、民事執行・倒産・労働審判・家事事件手続きなどは今回のオンライン申立ての対象外とされており、これらは2028年6月(令和10年6月)までに順次対象となる予定です。
証人尋問もウェブ会議で可能に 迅速裁判の新制度も創設
今回の全面施行で目立った変化の一つが、証人尋問のウェブ会議利用の拡充です。これまで証人尋問は原則として法廷への出頭が求められていましたが、改正後は、当事者双方に異議がない場合や証人の住所・年齢・心身の状態など一定の事情がある場合に、裁判所が相当と認めれば、ウェブ会議によって証人尋問を実施できるようになりました。 これにより、証人が自宅や職場など裁判所以外の場所から証言でき、心身・移動面での負担軽減が期待されます。
さらに今回の施行にあわせ、「法定審理期間訴訟手続」と呼ばれる新制度も創設されました。 原告・被告双方の申し出と同意があれば、手続き開始から6カ月以内に審理を終結し、その後1カ月以内に判決を言い渡す迅速裁判の枠組みです。 ただし、消費者紛争や個別の労働紛争など、弱者が企業と争う類の裁判はこの制度の対象外とされています。 また一方で、デジタル機器に不慣れな当事者への対応策や、本人訴訟を行う当事者がIT化の恩恵を享受しにくいという懸念も指摘されており、デジタル格差への対応が今後の課題として残っています。









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