
ウナギの養殖大手である山田水産(大分県佐伯市)が、卵から人工的に育てた「完全養殖ウナギ」の蒲焼を5月29日から試験販売します。世界で初めて一般消費者向けに完全養殖ウナギが市場に出回る取り組みで、日本橋三越本店やイオングループの電子商取引サイト、同社の公式オンラインショップなどで数量限定で扱われます。 参考価格はギフト箱入り2尾セットで税込9720円とされており、1尾当たりではおよそ5000円程度の高級品として位置づけられています。 19日には山田水産の関係者が農林水産省を訪れ、完全養殖ウナギのかば焼きを鈴木農林水産大臣が試食し、「おいしい」と評価するとともに、今後の普及への後押しに意欲を示したと報じられています。
完全養殖ウナギは、国立研究開発法人水産研究・教育機構(水研機構)などが長年取り組んできた人工種苗の量産技術を基盤にしており、人工的に育てた親ウナギから採卵し、ふ化から稚魚、成魚までを全て養殖施設内で完結させるのが特徴です。 同機構や民間企業などの連携により、大型水槽の改良や飼料・給餌方法の工夫が進み、現在では年間1万尾以上の完全養殖シラスウナギ(稚魚)の安定生産が可能な水準に到達したとされています。 これにより、天然の稚魚を捕獲して育てる従来の養殖とは異なり、資源量に大きく左右されない供給体制の実現に向けた具体的な一歩となります。
一方で、コスト面などの課題も残っています。水産研究・教育機構などによると、完全養殖ウナギの稚魚1尾当たりの生産コストは、2016年度には約4万円に達していたものの、自動給餌器の導入や水槽構造の工夫などによる効率化で、現在は約1800円まで引き下げられたといいます。 それでも、天然のシラスウナギを用いた一般的な養殖と比べて3〜4倍の水準にあり、同機構は将来的に800円程度までの低減を目標に技術開発を継続する方針を示しています。 山田水産も今回の試験販売を通じて消費者の反応や価格受容性を見極め、量産体制の拡充とコスト削減を両立させながら商業化につなげたい考えです。
ウナギ資源の減少と完全養殖への期待
日本人の食卓に欠かせないウナギは、近年、国内外で資源の減少が深刻化しており、供給構造の脆弱さが指摘されています。農林水産省の資料などによると、2024年の国内におけるウナギ供給量は約6万941トンで、2000年前後のピーク時と比べて4割程度にまで落ち込んでいます。 このうち約4万4730トンが中国などからの輸入に依存しており、国内で生産されるウナギは1万6000トン余りにとどまるとされています。 いわゆる「白いダイヤ」とも呼ばれるシラスウナギの漁獲は年ごとの変動が大きく、不漁の年には価格が高騰するため、養殖業者や小売価格にも大きな影響を与えてきました。
こうした中で、卵から成魚までを一貫して人工的に育てる完全養殖は、天然資源への依存度を下げ、長期的に安定した供給を可能にする技術として期待されています。 今回の試験販売では、ギフト需要を意識した高価格帯の商品としてスタートしますが、技術革新と生産規模の拡大によりコストがさらに低下すれば、一般家庭の食卓にも手の届く価格帯で流通させることが視野に入ります。 また、完全養殖は資源管理の観点から国際的にも注目されており、国内での成功事例が確立すれば、将来的には海外市場への技術展開やブランド価値の向上につながる可能性もあります。 山田水産や水産研究・教育機構は、今後も試験販売の結果や消費者ニーズを踏まえながら、生産体制の強化と持続可能なウナギ供給モデルの構築を進めていく考えです。












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