スペースXが過去最大のIPOへ、「火星に100万人」構想や宇宙データセンター計画が目論見書で判明

米スペースXが5月20日に米証券取引委員会(SEC)へ提出した新規株式公開(IPO)に向けた目論見書(S-1)の詳細が明らかになりました。6月12日にもナスダック市場へ上場する予定であり、ティッカーシンボルは「SPCX」となります。資金調達額は最大750億ドルから800億ドル(約12兆円以上)と見込まれており、実現すれば史上最大規模のIPOです。企業評価額は2兆ドル(約318兆円)に達すると報じられています。
目論見書には、最高経営責任者(CEO)であるイーロン・マスク氏の野心的な宇宙開発のビジョンが記されています。特に注目を集めているのが、人工知能(AI)向けの「宇宙データセンター」構想です。これは、2028年までにAIサーバーを搭載した人工衛星網を地球軌道上に構築する計画です。地球上ではデータセンターを動かす電力インフラが限られていますが、宇宙空間では太陽電池によって24時間の持続的な発電が可能となります。
スペースXは、100ギガワット(ギガは10億)規模の演算能力を持つ衛星網を展開するためには、年間数千回の打ち上げと約100万トンの軌道への輸送が必要であるとしており、自社開発中の世界最大のロケット「スターシップ」の完全実用化が不可欠です。あわせて、搭載する半導体も計画中の巨大半導体工場「テラファブ」で量産させる必要があります。
さらに、地球からの打ち上げにとどまらず、月面に基地を設けてAI向け衛星を月面で製造する計画も明記されました。月面からは電磁力でモノを動かす「マスドライバー」を使用し、効率的に地球軌道上へ衛星を飛ばせるとしています。このマスドライバーという用語はSF作品の「機動戦士ガンダム」シリーズなどでも度々登場するもので、目論見書冒頭の用語集でも解説されています。スペースXはすでに年間100回以上のロケット打ち上げに成功し、約1万基の通信衛星網を配備して世界の安全保障に関わる事業を構築した実績を持ちます。その実力を背景に、「当社だけがこの計画を短期的に大規模展開できる能力を有する」と強く主張しています。
業績連動指標は「火星への移住」、マスク氏に巨額の株式報酬も
目論見書では、火星への人類進出計画も詳細に語られています。スペースXは、「人類文明が単一の惑星に閉じ込められている現在のパラダイムは、惑星規模では予測不可能かつ制御不能な存亡の危機に人類をさらす」と指摘し、火星への移住が人類文明の永続的な拡大を支えるとしています。
特筆すべきは、この火星移住がイーロン・マスク氏の業績連動報酬の具体的な指標として設定されている点です。同社が7.5兆ドル(約1190兆円)の時価総額というマイルストーンを達成し、少なくとも100万人の居住者がいる人類のコロニーを火星に設立するという条件を達成した場合、マスク氏には10億株の株式報酬が付与される仕組みとなっています。本文の1ページ目には「宇宙へ飛び出し星々の間を旅することほど、ワクワクすることは他に思い浮かばない」というマスク氏のコメントが掲載されており、一見荒唐無稽に思える構想を掲げて「夢を売る」同社が、株式市場で実際にどれだけの評価額をつけるのか、世界中から大きな注目が集まっています。












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