
5月25日に施行される「事業性融資の推進等に関する法律」に基づき、企業の将来性や無形資産を担保とする「企業価値担保権」が導入されます。これまで日本の融資は不動産担保や経営者の個人保証に大きく依存してきましたが、この新型融資により、企業の技術力や顧客基盤といった事業価値そのものを担保に資金調達を行うことが可能となります。
この新たな枠組みに対し、3メガバンクをはじめとする10行以上の金融機関が参入を予定しています。みずほ銀行は、第1号案件として居酒屋チェーン「がブリチキン。」を展開するブルームダイニングサービス(名古屋市)への融資を月内に実施する方針です。同社の若年層の支持や出店拡大による成長余地が評価されました。また、三井住友銀行は5月に社内で担保権の取り扱い手続きを周知しており、三菱UFJ銀行も参入に向けた準備を進めています。
地域金融機関の動きも活発化しています。山口県を地盤とする西京銀行は、埼玉県の農業法人である中森農産が山口市阿東地区に新たに設立した農業系スタートアップ、中森農産阿東株式会社への融資と5000万円の出資を含む資本業務提携を決定しました。同社はAIやビッグデータを活用した生産工程の最適化により、農業の収益性向上を目指しています。このほか、商工組合中央金庫や北海道の北洋銀行、長野県岡谷市の諏訪信用金庫なども同様の事業性融資を開始します。
米国では無担保や企業価値を担保にした借り入れが企業の負債総額の8割を占めるとの調査もありますが、日本では1990年代のバブル崩壊以降、担保や保証に依存する慣行が長く続いてきました。今回の新制度は、十分な有形資産を持たないスタートアップ企業が資金調達に二の足を踏む要因を取り除き、エクイティ投資のみに頼らない新たな資金供給の道を開く重要な転換点となります。ベンチャーキャピタルからの投資などに頼らざるを得なかった新興企業にとって、デットファイナンスによる成長資金の獲得が容易になり、日本経済における起業や新規事業の創出を力強く後押しすることが見込まれています。
労働者保護と経済成長を両立させる政府の新たな支援体制
政府はこうした旧来の金融慣行からの脱却を、制度面から多角的に支援しています。厚生労働省は労働者保護の観点から、「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」を改定し、2026年5月25日から適用します。企業が破綻し企業価値担保権が実行される場合でも、事業を解体せずに原則として「事業譲渡」によって雇用を維持しつつ承継させる方針を明記しました。
さらに、金融庁は、赤字決算が続いている企業であっても将来の明確な成長が見込めれば「正常先」として分類し得るという、新しい債務者区分の指針をまとめています。金融機関が対象企業の事業将来性を見極める「目利き」の力を発揮し、業況に応じた伴走型の経営支援を行うことで、スタートアップ企業の資金調達は飛躍的に容易になります。こうした一連の制度改革は、技術革新を促し、日本経済全体の成長を底上げする強力な推進力となることが期待されています。








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