SNS各社が情プラ法に基づく削除対応を初公表 Xは報告7600万件超も措置率わずか0.1%

SNS各社が情プラ法に基づく削除対応を初公表 Xは報告7600万件超も措置率わずか0.1%

2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法(情プラ法)に基づき、X(旧ツイッター)やメタ、TikTokなどSNSを運営する各社が2025年度の投稿削除対応状況を相次いで公表しました。しかし、各社の対応率はいずれも5割に満たず、Xに至っては報告数に対する措置率が0.1%にとどまり、法律の実効性をめぐる議論が高まっています。

情プラ法は2024年5月に成立し、2025年4月1日に施行されました。旧プロバイダ責任制限法を改正した同法は、SNSや動画プラットフォームなど大規模サービスの運営事業者に対し、誹謗(ひぼう)中傷などの権利侵害投稿への迅速な対応を義務付けるものです。総務省はグーグル、LINEヤフー、メタ、TikTok、Xの5社を対象事業者として最初に指定し、その後ドワンゴ、サイバーエージェント、湘南西武ホーム(爆サイ.com)、Pinterestを加えた計9社が現在の指定対象となっています。

法律が各事業者に求める主な義務は、オンラインによる削除申請窓口の整備・公表、権利侵害の有無を調べる「侵害情報調査専門員」の配置、申請から原則7日以内での対応判断と通知、そして年1回の運用状況公表です。これらに違反し、総務大臣の是正命令に従わなかった場合には最大1億円の罰金が科せられる規定も設けられており、SNS事業者に罰則を定める日本初の法律として注目を集めています。

今回の公表データで際立つのがXの対応状況です。Xは2025年4月からの1年間で、日本のユーザーから攻撃的な行為・嫌がらせ・なりすましなどを理由とした報告が計7600万件にのぼったにもかかわらず、削除や非表示で対応したのは7万9000件、アカウント停止は4万7000件にとどまり、措置率は非表示などを含めても全体の0.1%に過ぎませんでした。一方でメタは、フェイスブックで134万件、インスタグラムで15万件の削除申し立てに対し、非表示など削除以外の対応も含めて計46%の対応率を示しました。

TikTokは対象期間中に約6万件の削除申し立てを受け、約1万4000件を削除しており、その9割が名誉毀損を理由とするものでした。グーグルが運営するYouTubeでは2450件の法的削除申し立てがあり、うち名誉毀損が1002件。実際に削除されたのは289件で、名誉毀損関連は155件でした。

LINEヤフーは「Yahoo!知恵袋」や「LINE VOOM」など対象4サービスにおいて、2025年4月から2026年3月の間にオンライン経由で延べ約5500件の削除要請を受け付け、うち約1000件を削除したことを明らかにしました。投稿に対する削除の割合は最大でも約2.5%にとどまっており、同社は「表現の自由の観点から判断が難しいケースが少なくなかった」と説明しています。サイバーエージェントは1056件の申し立てに対し595件を削除。名誉毀損・誹謗中傷の193件の申し立てのうち89件を削除しました。

法律の実効性に疑問の声 専門員配置は8社が最低限の1人

各社が削除申請への対応だけでなく、AIや自社独自の基準に基づく能動的な削除も行っている点は評価できますが、法律の実効性についての懸念も広がっています。

情プラ法が設置を義務付けている「侵害情報調査専門員」について、2025年11月末時点の届出資料に基づく情報公開請求の結果、9社のうち8社が各サービスで法律上の最低限である1人にとどめていることが明らかになっています。権利侵害に関する苦情が多いXやメタも含まれており、有識者からは「対応が誠実だとは評価しにくい」との指摘も出ています。

SNSに詳しい弁護士は、各社が自社規約に違反すると判断した投稿を積極的に削除している一方、利用者からの削除申請への対応は限られているとし、「申請に対してより実効的な審査制度を義務付けるなど、より踏み込んだ対応が求められる可能性がある」と述べています。情プラ法は運用の透明化を通じてネットの言論空間の健全化を促すことを目指していますが、今回の初公表データは、その実現に向けた課題の大きさを改めて浮き彫りにしました。

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