中国スタートアップEngineAI、ヒューマノイド「T800」量産体制を本格稼働 年1万台生産へ

中国スタートアップEngineAI、ヒューマノイド「T800」量産体制を本格稼働 年1万台生産へ

中国のロボットスタートアップ企業EngineAI Robotics(以下EngineAI)が、フルサイズのヒューマノイドロボット「T800」の量産ラインを本格稼働させ、年間1万台規模の生産体制に移行したことが明らかになりました。 深センに新たに立ち上げた「インテリジェント製造基地」では、部品の受け入れ検査から最終組み立て、出荷前検査、アフターサービスまでを一拠点で完結させる体制を構築しており、約1万2000平方メートルの工場レイアウトを生かして、15分に1台のペースで新型ヒューマノイドをラインオフできると説明しています。

EngineAIは2023年設立の新興企業で、2024年には試作機を少量生産した後、数百台規模の出荷を経て、今回一気に年間1万台レベルの量産段階に踏み込んだとされています。 同社は研究開発面では自律性を維持しつつも、生産では「サプライチェーンの品質管理」「高度な生産プロセス」「スマート製造のデジタル管理」「厳格な出荷前テスト」の4本柱からなる品質保証フレームワークを導入し、部品調達から完成品までのトレーサビリティーを確保しているのが特徴です。

具体的には、統合ジョイントなど主要コンポーネントの品質基準を自社で定めた上で、自動化されたロック・接着・レーザー溶接装置を活用し、生産効率を従来比で4割向上させたとしています。 また、すべての部品と完成品に固有の生産IDを付与し、デジタル管理システム上でライフサイクル全体を追跡できるようにすることで、故障時の原因究明やアフターサービスの効率化を狙っています。 完成したロボットは出荷前に多項目の機能検査と動作シミュレーションを受けることが義務付けられており、人型ロボットの安全性と信頼性の確保に力を入れていることがうかがえます。

同社は深センに加えて河南にも製造拠点を展開し、複数工場の生産能力を連携させることで、受注状況に応じた柔軟な供給体制を築く方針です。 共同設立者のRen Guowen氏は、インテリジェント製造ネットワークを中国各地へ広げることで、将来的な世界市場への展開に備える考えを示しており、商業サービス、教育、研究、産業用途など多様な分野でT800の導入を進めるとしています。

中国で加速する人型ロボット量産競争とT800の位置づけ

EngineAIの動きは、中国で急速に立ち上がる人型ロボット産業全体の流れの一部でもあります。 中国工業情報化部によると、2025年時点で国内の人型ロボットメーカーは140社を超え、330機種以上が発表されており、英調査会社Omdiaの推計では、2025年の世界の人型ロボット出荷台数は約1万3318台とされています。一方、中国メディアが引用する別の市場調査では、中国の人型ロボット生産は2026年に前年比94%増となる見通しで、2025年時点で中国企業が世界市場の大半を占めるとの見方も示されています。

個別企業を見ると、上海のアジボット(智元機器人)は2026年3月時点で1万台目の人型ロボット完成を迎えたほか、年間5000台の生産体制をわずか数カ月で達成したとのことです。 また、UBTECH(優必選科技)も工業用ヒューマノイドの生産能力を年内に1万台規模へ引き上げる計画を表明するなど、中国勢は量産規模の拡大を競う状況にあります。 こうしたなかで、EngineAIが深センの新工場をてこにT800の年間1万台体制を掲げたことは、中国ヒューマノイド市場の量産競争が一段と加速していることを象徴する動きといえます。

背景には、AI半導体やアクチュエーターなどの部品を含むサプライチェーンが国内で整備され、EV産業など既存の供給網を活用できる土壌があることに加え、中国政府による政策的な後押しがあると指摘されています。 日本国内でも、ドーナッツロボティクスが建設現場向けのヒト型ロボット「cinnamon 1」を開発し、1体1000万~2000万円での販売を発表するなど、労働力不足の解消に向けたヒト型ロボットの活用が模索され始めていますが、中国勢は既に量とスピードで先行しているとの見方が出ています。 T800を含む中国製ヒューマノイドが、今後どの程度実運用で成果を上げるかは未知数なものの、建築現場や製造業、サービス業など人手不足が深刻な現場での導入が進めば、アジアを中心に人型ロボット市場の競争軸が大きく変わる可能性もあります。

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