
アジアのナフサ(粗製ガソリン)価格が3月上旬以来の安値へと急落しています。アラブ首長国連邦(UAE)の国営石油会社であるアブダビ国営石油(ADNOC)が5月から、オマーンのソハール港を経由する新たなルートでナフサの輸出を再開したことがトレーダーらの証言で明らかになりました。この動きは、米国とイスラエルによるイランへの軍事攻撃を契機とした地政学的リスクの高まりによって生じていた深刻な供給逼迫を緩和し得る、極めて重要な代替ルートが確立されたことを意味しています。
ADNOCは4月の段階で、イラン紛争の影響で中東のチョークポイントであるホルムズ海峡を経由する海運が大きく滞り、船舶の安全航行が脅かされたことを受けました。これに伴い、同社は自国のルワイス製油所からの月約100万トン規模に上るナフサの輸出停止を余意なくされていました。プラスチックや合成繊維の基礎原料となるナフサの供給が突然断たれたことは、関連市場に大きな動揺を広げていました。
しかし、トレーダーらによりますと、ADNOCは先月、製油所から小型や中型のタンカーで貨物を海上へと運び出し、比較的安全なオマーンのソハール港の沖合で別の大型タンカーへと直接荷物を移し替えてアジア向けに輸送する「船から船への積み替え(STS)」と呼ばれる特殊なロジスティクス手法を採用し、実質的な輸出再開にこぎ着けました。
このADNOCが主導した回避策は、高額な保険料や拿捕などのホルムズ海峡通過リスクを何としても避けたいと考える買い手企業にとって、確実性の高い代替供給ルートとして機能します。結果としてアジアの主要市場に対する供給量の増加に直結しており、先行き不透明感から生じていた過度なパニック状態は沈静化の兆しを見せています。
価格はピーク時の4割減、依然残る中東依存の構造的課題
アジアのナフサ価格は今年3月、イラン攻撃に伴うホルムズ海峡危機への供給懸念から市場の不安感が最高潮に達し、過去最高となる1トン=1300ドルにまで急騰していました。しかし、今回のオマーン経由での代替供給ルート再開が確認されると価格は一気に下落へと転じました。2日のアジアの指標ナフサ価格(7月後半渡し)は、ピーク時から大幅な値下がりとなる788ドルまで急落しています。
このような価格の急落は需要側の企業に一時的な安心感をもたらしましたが、コストの高い迂回ルートであっても調達を優先せざるを得ないのが現状です。イラン政府が依然として海峡の管理権を主張しオマーンへの牽制を続けるなど火種は燻っており、日本を含むアジア諸国にとって中東依存というエネルギー安全保障上の構造的弱点が根本的に解決したわけではありません。各産業は、引き続きサプライチェーンの多角化と市場動向の注視を迫られています。
ナフサに関する情報については、下記もお読みください。
https://tokyonewsmedia.com/archives/tag/naphtha












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