
電気自動車大手BYDが、自社開発の4ナノメートル(nm)プロセスを採用した車載自動運転チップ「璇璣(センキ)A3」を発表しました。同チップを核とする都市部自動運転向けの「事故全額補償」制度も打ち出し、自動運転競争が「技術」から「信頼」へと新たな局面を迎えています。
「璇璣A3」は4nmプロセスを採用した車載向けの統合型半導体チップです。3個を1台の車両に搭載した場合、合計演算性能は2100TOPSを超え、L3およびL4レベルの高度な自動運転機能に対応できるとされています。
BYDは深圳本社の知能化戦略発表会で、知能型運転支援システム「天神之眼」搭載車を対象とした事故補償制度の導入を発表しました。システム使用中に発生した事故について、納車日から1年間、人的・物的被害を含む一切の損失を補償するものです。補償上限は設けず、既存の自動車保険にも影響しない形で、自動運転中の事故責任をメーカー側が全面的に引き受けるという姿勢を明確にしました。
このサービスは、自動駐車機能を対象に導入していた「知能型駐車安全責任保障」を都市走行領域へ拡大するものです。同社は今後、知能型運転関連の研究開発に1,000億元(約2兆3,500億円)以上を投じる計画も発表しており、技術力と安全責任の両面から市場の信頼を獲得しようとしています。
1994年にバッテリーメーカーとして創業したBYDは、2003年に自動車事業に参入後、電動化シフトを加速させ、2022年にはガソリン車の生産を終了。EVとプラグインハイブリッドに集中する戦略を取っています。
価格競争力に加え、車載ソフトウェアやチップまで手がける垂直統合モデルを強みとしてきた同社が、今度は自動運転の「安全責任」を前面に押し出したことで、競合も追随する可能性が出てきました。
EV覇権争いと自動運転「信頼」競争の行方
EV市場において、BYDは2025年通年のEV販売台数でテスラを初めて上回り、年間EV世界首位に躍り出ました。BYDが約225万台のEVを販売したのに対し、テスラは約163万台にとどまっています。
自動運転レベルでは、特定条件下でシステムが主体となって走行するL3、さらにドライバーの介入なしに最小リスク状態へ移行できるL4が「本格的な自動運転」の入り口とされますが、国際的には事故発生時の責任所在が実用化のボトルネックと指摘されてきました。
今回のBYDの表明は中国市場に限定されているものの、メーカー自らが一定条件下での事故リスクを全面的に負うと宣言したことで、各国の制度設計や他メーカーの責任分担のあり方にも影響を与える可能性があります。
自動運転チップと事故補償制度を梃子に、利用者の「安心感」をどこまで獲得できるかが、BYDの次の成長を左右する鍵となりそうです。今後は、同様の補償スキームが日本市場に導入されるかどうかに加え、国内メーカーや損害保険会社がどう対応するかも注目されます。












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