
TDKは2026年6月10日、データセンター冷却部品を手掛ける米スタートアップ企業Fabric8Labs(ファブリックエイトラボズ)を最大4億ドル(約640億円)で買収することを発表し、AIデータセンター向け事業の拡大を本格化させます。
クロージング後、Fabric8LabsはTDKの完全子会社となる予定で、データセンターの液冷方式に使うサーマルマネジメント部品を数年以内に市場投入する計画です。AI向けGPUなど高性能半導体の発熱増加により、サーバー冷却はデータセンター運営の必須条件として重みを増しており、効率的な冷却技術の需要は世界規模で高まっています。
Fabric8Labsは2015年設立の米カリフォルニア州サンディエゴのスタートアップです。「電気化学的アディティブ・マニュファクチャリング(ECAM)」と呼ばれる独自の金属3Dプリント技術を保有し、精緻かつ複雑な内部構造の金属部品を製造できることが特徴です。
データセンターではAIサーバー向けに、空冷方式から冷却液を使う液冷方式へのシフトが進んでおり、半導体チップに密着するコールドプレート内部の流路設計が冷却性能を左右します。Fabric8LabsのECAM技術により、冷却液との接触面積を最大化した高密度金属構造が実現できるため、TDKは排熱効率を高めたコールドプレート向け内部構造体の供給力を強化できるとみられます。
取引条件は前払い金と複数年にわたるアーンアウトを組み合わせた形で、総額は最大4億ドルです。TDKのコーポレートベンチャーキャピタルであるTDK Venturesはシード期からFabric8Labsに出資しており、今回はその関係を発展させ完全子会社化に踏み切りました。
生成AIの普及によるデータセンター関連市場の拡大を背景に、TDKは冷却部品を新たな成長領域と位置づけ、データセンター向けビジネス全体のポートフォリオを強化していきます。
AIエコシステム戦略の要、TDKが「熱管理」領域に照準
TDKはこれまでM&Aを通じて事業ポートフォリオを変革してきた経緯があり、電池やセンサーなどの分野でM&Aを活用し、成長事業を育ててきました。現在は「AIエコシステム」を中長期の成長軸に据え、AIデータセンター向け電子部品・材料の強化を推進中です。
AI市場向け売上高が全社売上の1割強にとどまるものの、決算説明会では、中長期で年率25〜30%の拡大を見込むとの方針が示されました。AI関連を重点投資分野とする姿勢が明確になっています。
今回のFabric8Labs買収は、このAIエコシステム戦略の中でも「熱管理」という専門性の高い領域を押さえる動きです。TDKは金属3Dプリント技術を、データセンター向け冷却部品だけでなくコンデンサーなど自社の受動部品にも応用することを検討しています。












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