AIが導く原発回帰と日本の大投資 トランプ政権が狙う5500億ドル枠と次世代SMRの勝算

原子力発電所

トランプ米政権によるエネルギー政策の進展に伴い、米国内での原子力発電所の新増設や活用に向けた動きが本格化しています。この方針は、1979年のスリーマイル島事故以降、長らく停滞していた米国の原子力政策を大きく転換させる可能性を秘めており、市場関係者の関心を集めています。

日米両国はかねてより、2025年7月に合意された関税引き下げに伴う経済協力を進めており、日本側による「5500億ドル(約88兆円)の対米投資枠」が設定されています。この投資枠の第1号案件としては、すでに2026年2月に中西部オハイオ州でのガス火力発電所の建設などが決定しています。今後は、クリーンで安定したベースロード電源として、次世代の小型モジュール炉(SMR)をはじめとする原子力分野への投資や連携の拡大が期待されています。

米国では1990年に112基だった稼働原子炉数が現在90基台まで減少しており、大型炉の建設は長らく停滞していました。2023年に稼働したウエスチングハウス製ボーグル原発3号機(ジョージア州)がおよそ30年ぶりの新規商業運転となるなど、供給力の拡大が課題となっています。こうした長年の停滞を打破するため、トランプ大統領は強力な推進計画を打ち出しています。2050年までに原発の発電能力を現在の4倍に高める目標を設定し、2030年までに大型炉を10基新設する計画です。さらに、小型炉(SMR)についても、大統領令などを通じて許認可手続きの迅速化を図り、将来的な大量導入に向けた基盤整備を進めています。

AI需要急増に伴う電力不足への懸念と日米サプライチェーン

原発回帰の背景にあるのは、人工知能(AI)開発競争に伴うデータセンターの電力需要急増です。消費電力は直近10年間で3倍となり、今後5年でさらに2倍〜3倍に増える予測が立てられています。米国の電力供給は将来的に需要に対して20%不足する恐れがあり、これがハイテク分野における国際競争の障壁となり得ます。そのため、アマゾン・ドット・コムをはじめとするテック大手も、データセンターに隣接可能で量産が容易なSMRへの投資や電力購入契約を計画しており、早期の商業化への期待が高まっています。

一方で、世界的な市場に目を向けると、過去10年間で着工された大型原発の9割は中国製とロシア製が占めているのが現状です。約20カ国で開発計画があるSMRにおいても、商業運転に向けた建設が進むのは中国やカナダなど一部にとどまっています。

エネルギー価格の高騰や脱炭素、そしてAIインフラの維持という多面的な課題に直面する中、西側諸国がいかにして次世代原子力技術のサプライチェーンを構築し、市場の巻き返しを図るかが、今後の世界的なエネルギー安全保障の大きな焦点となります。

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