俳優・中村玉緒さん死去 昭和映画からバラエティーまで支えた「お茶の間の顔」

俳優・中村玉緒さん死去 昭和映画からバラエティーまで支えた「お茶の間の顔」

俳優でタレントの中村玉緒(なかむら・たまお、本名・奥村玉緒)さんが、6月9日に肺炎のため亡くなりました。86歳でした。 所属事務所の長良プロダクションが12日に訃報を公表し、「享年86歳にて永眠した」と明らかにしました。 京都府出身で、歌舞伎俳優の二代目中村鴈治郎を父に持つ芸能一家に生まれ、戦後日本映画の隆盛期からテレビ全盛期にかけて幅広く活躍しました。

1939年7月12日生まれの中村さんは、松竹映画でデビュー後、大映に移籍し、時代劇や文芸作品などで名バイプレーヤーとして存在感を高めました。 とりわけ「ぼんち」や「大菩薩峠」などの作品で評価を集め、第11回ブルーリボン賞助演女優賞を受賞するなど、映画女優として確かな地位を築きました。 テレビドラマにも進出し、「いのちの現場から」シリーズなどで親しみのある役柄を演じ、お茶の間にその顔と声を浸透させていきました。

私生活では、1962年に映画「悪名」シリーズなどで共演した俳優・勝新太郎さんと結婚し、公私にわたるパートナーとしてその波瀾万丈な人生を支えました。 勝さんが設立した勝プロダクションの興亡や、家族の不祥事など度重なるトラブルに見舞われながらも、夫を献身的に支える姿はたびたび報じられました。 1997年に勝さんが亡くなった後も、その思い出をテレビ番組などで温かく語り続けたことが印象に残るという声も上がっています。

平成以降は、トークやバラエティー番組への出演が増え、「さんまのSUPERからくりTV」(TBS系)などで見せた天真爛漫で飾らない語り口が人気を集めました。 流行した携帯型ゲーム「たまごっち」にちなみ、視聴者から「玉緒っち」の愛称で呼ばれるなど、高齢になってからも新たなファン層を獲得していました。 映画界への貢献も評価され、2007年には田中絹代賞を受賞するなど、長年のキャリアを通じて映像文化を支えた功績が認められています。

晩年の歩みと残された「庶民派」の legacy

晩年の中村さんは、体調面を考慮しながら仕事量を徐々にセーブし、近年は東京都内の介護・療養施設で生活していたと報じられています。 2022年ごろから療養生活に入りつつも、「また舞台に立ちたい」と周囲に語っていたとされ、最後まで表現の場への意欲を失わなかった様子がうかがえます。 関係者によると、5月末ごろから体調が悪化し、9日午後に肺炎のため息を引き取ったということです。

通夜は16日夕、告別式は17日午前に東京都内の斎場で営まれる予定で、喪主は長女が務めます。 訃報が伝わると、共演者や関係者からは「いつも周囲を和ませてくれた」「画面越しでも人柄の温かさが伝わる人だった」といった追悼の声が相次ぎました。 歌手の氷川きよしさんは、過去にデュエット曲で共演した縁から「いただいた留守電も大切に残している」とコメントし、優しく気さくな姿を振り返っています。

一方で、映画やドラマ、バラエティーと多岐にわたる出演歴を背景に、ネット上では「祖父母と一緒に見た時代劇を思い出す」「日曜のバラエティーで笑わせてもらった」といった世代を超えた追悼メッセージも広がっています。 歌舞伎名門の家に生まれながらも、庶民的で親しみやすいキャラクターで長く愛された中村さんの歩みは、戦後日本の映像文化とテレビ娯楽の変遷そのものでもありました。 「勝新さんのもとへ帰った」という表現とともに、その穏やかな最期を悼む声は今後もしばらく続きそうです。

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