
非政府組織(NGO)である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は6月9日、核兵器を保有する9カ国が2025年、核兵器の開発や維持に1188億ドル(約19兆円)を費やしたと推計する報告書を発表しました。この支出額は2024年比で19%増加しており、過去最高を記録したとしています。
ICANは、核保有国が「核戦争に勝者はなく、決して行われてはならない」と認めながらも、核戦力の拡大や最新化を続けていると批判しています。国別の推計支出額では、首位の米国が692億ドルと突出し、他の8カ国の合計を大きく上回りました。2位は中国で135億ドル、3位は英国の126億ドルとなっています。これにロシア、フランス、インド、パキスタン、イスラエルと続き、最も支出が少ない北朝鮮であっても6億5600万ドルに上りました。
報告書をまとめた一人であるICANのスージー・スナイダー氏は「生活費が急騰し、多くの人々にとって食料や燃料が手の届かないものになっている時に、9カ国が安全保障という偽りの約束に多額の資金を費やしていることは考えられない」と強く非難しています。報告書によると、核兵器に費やされる資金の1日分で、食料不安に直面する200万人を支援できる計算になります。また、1年分があれば600万戸超の住宅に太陽光発電を導入できると試算し、各国の国際援助も削減されていることを踏まえて、人道支援などの分野へ資金を振り向けるべきだと訴えました。
さらに、兵器への巨額の支出は物理的な核戦力の量的・質的な拡大にも直結しています。長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA)が9日に発表した全米科学者連盟の推計データによると、世界9カ国が保有する配備済みなどの現役核弾頭は計9745発に上り、昨年比で130発増加しています。RECNAの中村桂子准教授は長崎市内で開かれた記者会見において「核兵器の近代化など核軍拡が進んでいる」と分析しました。核軍縮の公的な枠組みが消滅し、お互いへの不信感が高まる中で、透明性の低下と核使用リスクの増大が浮き彫りになっています。
北朝鮮の新たな核施設稼働と強まる国際社会の懸念
世界的な核軍拡の波は北東アジアでも深刻さを増しています。北朝鮮メディアは6月4日、金正恩朝鮮労働党総書記が新たに稼働した核物質生産工場を視察したと報じました。公開された画像には、ウラン濃縮に必要な遠心分離機が並ぶ様子が映し出されていました。金総書記は、過去5年間で兵器級核物質の生産能力が「従来の2倍を超える水準に達した」と評価し、核戦力を飛躍的に強化していく方針を強調しています。
北朝鮮が核開発を加速させている現状に対し、国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は金総書記の発言に触れ、「深刻な懸念」を表明しました。IAEAはすでに3月の段階で、寧辺の施設について内部設備の工事進行を警告していました。
莫大な資金が核兵器に投じられ、実際に弾頭数や生産能力が拡大し続ける現状は、安全保障環境を著しく悪化させています。人道支援が圧迫される中、歯止めをかける新たな軍備管理の枠組みが急務となっています。












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