
もし、手術の日程を選べるとしたら、あなたは何曜日を選びますか?
おそらく多くの方が、「医師の都合に合わせる」もしくは「仕事の休みが取りやすい日にする」と考えることでしょう。
そして、「何曜日でも手術の結果は同じ」と思われているのではないでしょうか。しかし、医療の現場では以前から、手術の曜日と術後の回復の関係が議論されてきました。
今回は、手術の曜日と術後の回復の関係についての研究結果を紹介します。
カナダにおける手術が行われた曜日と、その後の患者さんの経過についてデータ分析
今回紹介するのは、米国医師会が発行するオンライン医学誌『JAMA Network Open』にて、2025年3月に発表された論文、『Postoperative Outcomes Following Preweekend Surgery(週末直前の手術後の転帰)』です。
カナダの大規模なデータを用いて、手術が行われた曜日と、その後の患者さんの経過について詳細に分析された、興味深い報告となっています。
43万人のデータが証明した「金曜日の手術は要注意?」
2025年3月、米ヒューストン・メソジスト病院のRaj Satkunasivam氏らは、この研究で、「金曜日に手術を受ける患者は、月曜日の患者に比べて、術後の死亡や合併症のリスクが有意に高い」と報告しました。
情報は、複数の医療データベースから取得しています。主要な処置と合併症に関する情報についてはオンタリオ州健康保険プログラムのデータベース、診断・処置・退院に関するデータについてはカナダ保健情報研究所の退院要約データベースと日帰り手術データベース、患者の人口統計情報については登録者データベース、医師の人口統計情報についてはICES医師データベースのものが使用されました。
術後30日から1年後まで続く週末効果
研究内容について、詳しく説明します。
【研究背景】
これまでも医療現場では、週末に医療の体制が手薄になる可能性を指摘する週末効果が囁かれていました。しかし、週末を挟むことが術後の経過(転帰)にどのような影響を及ぼすのか、総合的に検討した研究はほとんどありませんでした。
【研究の目的】
そこで本研究は、金曜日などの週末直前に行われる手術が、術後30日といった短期的な成績だけでなく、90日後、さらには1年後という長期的な予後にどのような影響を与えるのかを詳細に検証することを目的として実施されました。
【研究方法】
カナダ・オンタリオ州で行われた多施設後ろ向きコホート研究です。2007年1月から2019年12月までの間に、25種類の一般的な外科手術のいずれかを受けた成人患者を対象としました。データ数は約43万人、術後1年間の追跡調査を実施し、詳細に解析しています。
【研究結果】
分析の結果、すべての外科専門分野、緊急・非緊急を問わず、短期(30日)、中期(90日)、長期(1年)のすべての期間において多岐にわたる影響が明らかになりました。具体的には、週末直前(金曜日)に手術を受けたグループは、週末明け(月曜日)と比較して、術後の死亡、再入院、合併症が起こる確率が高く、入院期間が長くなることが判明しました。
なぜ「週末前の手術」が危険なのか?
注意すべきは、結果はあくまで統計的な傾向であり、緊急手術の場合は曜日を問わず早い処置が優先されるという点です。
このような結果になる理由は、金曜の執刀医の腕(年齢や経験年数)ではなく、「週末の看護・管理体制」に起因すると考えられます。医療構造の異なる様々な国で、週末効果が見られるので、その理由は週末に人員が減りやすく、専門知識にもばらつきが生じるためでしょう。人員不足の週末チームでは、急性合併症の初期兆候を発見し対処する能力が低下しやすく、結果的に患者さんのリスクが高まります。
これは医療側に対し、現在の手術スケジュールや人員配置の見直し、そして周術期ケア(術前後の管理)の流れをより適切にし、合併症を軽減するアプローチが必要であることを強く示しています。
最適な手術を受けるタイミングの考え方
手術の成功は手術そのものだけで決まるわけではなく、その後のケアの体制が大きく関わっていることがデータで示されました。
もし、予定手術(急を要さない手術)を受けることになり、ご自身で日程の相談ができる場合は、週末効果を一つの知見として役立ててみてはいかがでしょうか。





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