
カンボジア北西部ポイペトを拠点とする特殊詐欺グループを巡り、愛知県警などの合同捜査本部は、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)の疑いで、自称会社役員の佐々木裕介容疑者(38)を逮捕しました。 佐々木容疑者は、現地拠点の「オーナー」で統括役とみられ、日本人「かけ子」らを束ねる立場にあったとされています。 捜査関係者によりますと、グループは警察官などを装って日本国内の高齢者らに虚偽の電話をかけ、現金をだまし取っていた疑いがもたれています。
この事件では、2025年にカンボジア・ポイペトの拠点から活動していた日本人「かけ子」29人が既に摘発されており、被害総額は数十億円に上るとみられています。 佐々木容疑者は、こうした拠点を背後から操り、組織の中核として資金や人材を供給していた疑いがあります。 具体的には、日本で勧誘した若者らをカンボジアの拠点に送り込み、詐欺の実行役として働かせていたとされます。 警察への取材では、詐取金の3~4割程度が報酬として佐々木容疑者に渡り、月に億単位、少なくとも1億円を上回る金額を得ていた可能性が指摘されています。
佐々木容疑者は、タイの首都バンコク市内の高級マンションで生活しながら、カンボジアの拠点に対して遠隔で指示を出していたといいます。 日本の捜査当局は、タイ警察と連携して行方を追い、入管法違反容疑で拘束されていた同容疑者が、日本に移送される機内で逮捕されました。 グループ内では「A先生」と呼ばれ、成績の良し悪しでかけ子同士を競わせるなど、組織的に詐欺を継続していたと報じられています。 現時点で佐々木容疑者は黙秘を続けており、合同捜査本部は資金の流れや他拠点の有無を含め、背後関係の全容解明を進める方針です。
浮かび上がる「海外拠点型」詐欺の実態と捜査の焦点
今回の事件では、日本人が海外拠点の「上位者」として組織全体を統括していた構図が浮かび上がり、従来の特殊詐欺とは異なる特徴が指摘されています。 ポイペトの拠点では中国系幹部らも関与していたとされ、日本人のかけ子と海外の指示役が複雑に連携する多国籍ネットワークの一端が明らかになりつつあります。 日本国内ではこれまで、受け子やかけ子といった末端メンバーの摘発が先行しがちでしたが、今回の逮捕は、海外に潜む指示役・オーナークラスに捜査のメスが及んだ象徴的なケースといえます。
一方、海外を拠点とする特殊詐欺グループは、現地の法制度や治安状況の違い、国境をまたぐ資金移動などを背景に、実態把握や立件に高いハードルがあるのも現実です。 捜査当局は、タイやカンボジア当局との協力を通じて日本人メンバーら36人を逮捕してきましたが、被害総額が「数十億円規模」とされる中、全体の被害把握には至っていないとみられます。 今回の逮捕を機に、警察は押収した通信記録や送金データなどを分析し、資金洗浄の経路や他国の拠点とのつながりを解明することが求められています。 被害の拡大を防ぐためには、国内での啓発や予防策に加え、国際的な捜査協力の枠組みをさらに強化できるかどうかが今後の焦点となります。







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